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寒山落木一 表紙

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正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

寒山落木五

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明治29年

〔冬〕

初冬 はつふゆ

初冬の家成つて壁いまだつかず

小春 こはる

売り出しの旗や小春の広小路

不忍も上野も小春日和哉

娘など出るや小春の古著店

用水や小春の金魚一つ浮く

窓の影小春の蜻蛉稀に飛ぶ

野の茶屋に蜜柑並べし小春哉

大寺の椽広うして小春哉

一車漬菜買ひけり小春凪

小春日や南を追ふて蝿の飛ぶ

小春日の馬徃来す王子道

小春野や草花痩せて昼の月

思ひ出す殊に老いての小春好

眺望

日光の山に鳶舞ふ小春哉

霜月 しもつき

霜月の空也は骨に生きにける

冬至 とうじ

物干の影に測りし冬至哉

十二月 じゅうにがつ

元碌十五年極月十四日夜の事也

閑居

十二月上野の北は静かなり

歳暮 せいぼ

行く年を人鈍にして子を得たり

行く年を母すこやかに我病めり

行く年の我いまだ老いず書を読ん

面白い事にもあはず年暮るゝ

冬日 ふゆひ

冬の日の短けれども石部迄

冬され ふゆされ・ふゆざれ

冬されや狐もくはぬ小豆飯

冬されて淋しき顔や琵琶法師

寒 かん

此部屋も坊主小し寒の内

寒さ さむさ

牢を出て人の顔見る寒さ哉

出女のへりて目黒の寒さ哉

半焼の家に人住む寒さ哉

六十にして洗礼受くる寒さ哉

念仏に紛らして居る寒さ哉

水涸れて橋行く人の寒さ哉

刀売つて土手八町の寒さ哉

くらがりに大仏見ゆる寒さ哉

をさな子の泣く泣く帰る寒哉

古刀人の味知る寒さ哉

山城に睨まれて居る寒さ哉

江に向いて一膳飯の店寒し

川上も川下もばつとして寒し

故里の入口寒し乱塔場

何やらの足跡寒き廚かな

剣に舞へば蝋燭寒き焔哉

月近く覗いて寒し山の寺

客稀に大丸寒し釜の湯気

瀧涸れて日向に寒し不動尊

説教は寒いか里の嫁御達

音塞き海より上る朝日哉

堂寒し羅漢五百の眼の光

家寒く有磯の海に向ひけり

狼の糞見て寒し白根越

山寒し樵夫一人下りて行く

吉原

寒さうに皆きぬきぬの顔許り

漱石の松山へ行くを送る

寒けれど富士見る旅は羨まし

荊軻

再びは帰らぬ道の寒さかな

妖怪体

寒燈明滅小僧すよすよと眠りけり

わが郷里松山に子売う売ろといふ幼子の遊びあり

鼻垂れの子が売れ残る寒哉

病中

寒さうに夜伽の人の假寝哉

開花樓に琵琶を聴く 二句

蝋燭の泪を流す寒さ哉

素人の平家を語る寒哉

凍 いて

蒟蒻も舌も此夜を凍りけり

靴凍てゝ墨塗るべくもあらぬ哉

冷飯のこほりたるに茶をかけるべく

妖怪体の内

鐘氷る夜床下にうなる金の精

冴 さえ

星冴えて篝火白き砦哉

鐘冴ゆる故かゝげても灯の消んとす

平家を聴く

琵琶冴えて星落来る台哉

冬雑 

家二軒杉二本冬の鴉飛ぶ

戸を閉ぢた家の多さよ冬の村

冬を誰いさゝむら竹茶の煙

煎餅干す日影短し冬の町

礎を起せば蟻の冬ごもり

睾丸の垢取る冬の日向哉

易を読む冬の日さしや牢の中

紅緑の仙台に帰るを送る

冬に入りて柿猶渋し此心

久松伯宴を紅葉舘に賜はる 二句

母人へ冬の筍もて帰る

君か代は冬の筍親五十

雪腸に贈る

はらわたの冬枯れてたゞ発句哉

冬住居 

日にうとき樫の木原や冬住居

冬搆 ふゆがまえ

内庭に割木つみたり冬搆

冬籠 ふゆごもり

冬籠仏壇の花枯れにけり

冬籠長生キせんと思ひけり

冬籠隣の夫婦いさかひす

冬籠茶釜の光る茶間哉

冬籠湯に入る我の垢を見よ

椽側へ出て汽車見るや冬籠

老僧の爪の長さよ冬籠

痰はきに痰のたまるや冬籠

大木の中に草家の冬籠

十年の耳ご掻きけり冬籠

袴著てゆかしや人の冬籠

ひつそりと冬籠るなり一軒家

湯治場や冬籠りたる人の声

何となく冬籠り居れば三味の声

草庵 二句

冬籠壁に歌あり発句あり

冬籠あるじ寝ながら人に逢ふ

病中

看病の我をとりまく冬籠

爐開 ろびらき

爐開や我に出家の心あり

火燵 こたつ

並べけり火爐の上の小人形

人老いぬ巨燵を本の置處

子を抱いて巨燵に凧を揚げる人

男の童と女の童と遊ぶ巨燵哉

趙飛燕巨燵の上に舞はせばや

火桶 ひおけ

いもあらばいも焼かうもの古火桶

埋火 いけび

埋火やほのかにうつる人の顔

絶恋

埋火に恨みしそれも昔なり

炭 すみ

炭売にかへてとらする小魚哉

やゝもすれば堅炭の火の消えんとす

紙衣 かみこ

紙衣著て河豚くふたる顔もせず

紙衣著て出づれば我に星落る

今出飛白の発明者鍵谷かな子の功徳を彰さんとて伊予郡の人より句を乞はれて

おもしろや紙衣も著ずにすむ世也

頭巾 ずきん

紙ぎれに小銭を包む頭巾哉

僧正の頭巾かぶりぬ市の月

頭巾著て人行かふや山の道

頭巾脱いで名のりかけたるかたき哉

頭巾著て平家を語る盲哉

綿帽子 わたぼうし

爺と婆と江戸見に行くや綿帽子

綿衣 わたこ

脛あらはに薩摩飛白の綿子哉

綿衣黄也村医者と見えて供一人

蒲団 ふとん

夢さめて木曽の宿屋よ薄蒲団

寄宿舎の窓にきたなき蒲団哉

薄蒲団十三銭の旅籠哉

縮緬の紫さめし衾かな

奮戦して右の足を失ひたる肋骨に寄す

わびしさや蒲団にのばす足のたけ

病中

詩腸枯れて病骨を護す蒲団哉

湯婆 ゆたんぽ・たんぽ

冷え盡す湯婆に足をちゞめけり

目さむるや湯婆わつかに暖き

ある時は手もとへよせる湯婆哉

古湯婆形海鼠に似申すよ

古庭や月に湯婆の湯をこぼす

貧乏は妾も置かず湯婆哉

病中二句

胃痛やんで足のばしたる湯婆哉

碧梧桐のわれをいたはる湯婆哉

懐爐 かいろ

ある時は背中へ入れる懐爐哉

三十にして我老いし懐爐哉

凍 いて

凍る手や栞の総の紅に

皸 あかぎれ

足袋ぬいであかゞり見るや夜半の鐘

あかゞりに油ぬりつゝ待つ夜哉

霜やけ しもやけ

はした女や霜やけかこつ豆らんぷ

足袋 たび

あちら向き古足袋さして居る妻よ

逢恋

君来まさんと思ひがけねば汚れ足袋

神の留守 かみのるす

野社はもとより神の留守にして

十夜 じゅうや

野の道や十夜戻りの小提灯

芭蕉忌 ばしょうき

芭蕉忌に芭蕉の像もなかりけり

亥子 いのこ

故郷の大根うまき亥子哉

冬至 とうじ

仏壇に水仙活けし冬至哉

鉢叩 はちたたき

足音や待つ夜も更けて鉢叩

横町へ曲りぬ雪の鉢叩

臘八 ろうはち

臘八や河豚と海鼠は従弟どし

クリスマス 

八人の子供むつましクリスマス

煤払 すすはらい

煤掃いて樓に上れば川広し

冠の煤掃くこともなかりけり

寝て聞くやあちらこちらの煤払

餅搗 もちつき

餅を搗く音やお城の山かつら

掛乞 かけごい

病中

また生きて借銭乞に叱らるゝ

松売 

苧殻売の門松売に来りたり

病中

寝て居れば松や松やと売に来る

年忘 としわすれ

年忘橙剥いて酒酌まん

待春 たいしゅん

春待つや椿の莟籠の鳥

病中

春を待つまでに我はや老いにけり

蕪引 かぶらひき

女どもの赤き蕪を引いて居る

露石に贈るべき手紙のはしに

此頃は蕪引くらん天王寺

力草 ちからぐさ

鶴の羽の抜けて残りぬ力草

夜興引 よこひき・よこうひき

夜興引や犬心得て山の道

納豆 なっとう

納豆の声や坐禅の腹の中

納豆汁しばらく神に黙祷す

納豆汁女殺したこともあり

禅僧を悼む

骨は土納豆は石となりけらし

風呂吹 ふろふき

風呂吹の冷えたるに一句題すべく

風呂吹をはさみきるこそ拙けれ

風呂吹は熱く麦飯はつめたく

風呂吹は三百年の法会哉

風呂吹や小窓を壓す雪曇

風呂吹や狂歌読むべき僧の顔

風呂吹にすべく大根の大なる

風呂吹に集まる法師誰〃ぞ

明月和尚百年忌

風呂吹を喰ひに浮世へ百年目

冬月 

不盡の山白くて冬の月夜哉

寒月や一本杉の一本

しつぽくをくふて出づれば冬の月

葬礼の提灯多し冬の月

屋根の上に火事見る人や冬の月

きぬぎぬや冬の有明寒鴉

赤子泣く真宗寺や冬の月

冬日 ふゆひ

石門を斜に冬の日影哉

鳥飛んで冬の日落る林哉

時雨 しぐれ

夕烏一羽おくれてしぐれけり

原中や夕日さしつゝむら時雨

吊柿の二筋三筋しぐれけり

老いぼれしくひつき犬をしぐれけり

きぬぎぬを引きとめられてしぐれけり

ともし火の一つ残りて小夜時雨

鶏頭を伐るにものうし初時雨

禅寺のつくづく古き時雨哉

枯枝に鳶と烏の時雨哉

烏鳶をかへり見て曰くしぐれんか

しぐるゝや群れて押しあふ桶の鮒

しぐるゝや日暮るゝや塔は見せながら

初時雨木もりのかぶす腐りけり

砂川の時雨吸こんで水もなし

掃溜に青菜の屑をしぐれけり

大牛の路に塞がる時雨哉

杉の空しぐるゝ駕の見えて行

樫の木に時雨鳴くなり谷の坊

樫の木に時雨鳴るなり谷の坊

入獄者に贈る

世の中はしぐるゝに君も痩せつらん

鴫立庵の図に題す

西行も虎もしぐれておはしけり

初恋

恋ともなしくれそめたる袂哉

庭前

しぐれしてねぢけぬ菊の枝もなし

病中二句

しぐるゝや蒟蒻冷えて臍の上

小夜時雨上野を虚子の来つゝあらん

琵琶を聴く

そうそうとしぐるゝ音や四つの絲

凩 こがらし

凩や禰宜帰り行く森の中

凩夜を荒れて虚空火を見る浅間山

凩の草吹きわたる広野哉

凩やさかさに刎ねる水車

凩の中に灯ともす都哉

凩や燃えてころがる鉋屑

凩や野の宮荒れて犬くゞり

君待つ夜また凩の雨になる

椎の木に凩強し十二月

題釈迦弾三絃図

凩や観ずれば皆法の声

平家を聴く

四絃迫れば凩さつと燭を吹く

愚庵和尚に寄す

凩の浄林の釜恙なきや

浅妻舟の踊を見て

うすものに吹く凩の風もなし

霜 しも

誰が家ぞ霜に折れたる萩芒

赤き実の一つこぼれぬ霜の庭

鴉鳴く四十九日や塚の霜

遼東の霜にちびたるひづめ哉

夜嵐や吹き静まつて蔦の霜

淋しげに霜の鳥居の立ち盡す

石蕗の葉の霜に尿する小僧哉

凱旋

兜脱げ酒ふるまはん鬢の霜

死恋

恋ひ死なばせめては塚の霜に訪へ

平家

琵琶悲し一夜に寒き鬢の霜

上野

灯氷る杉の木立や路の霜

霰 あられ

時々に霰となつて風強し

はらはらと音して月の霰哉

霰笠を打つてすくばる小順礼

竹藪に伏勢起る霰かな

竹売の通りかゝりし霰哉

音のして霰も見えず藪の中

鍋焼の行燈を打つ霰かな

帆柱や大きな月にふる霰

音のして藁火に消ゆる霰哉

藁灰にまぶれてしまふ霰哉

琵琶を聴く

四絃一齊霰たばしる畳哉

雪 ゆき

走り来る禿に聞けば夜の雪

灯のともる東照宮や杉の雪

勘当の子を思ひ出す夜の雪

吉原や眼にあまりたる雪の不盡

刈り残す薄の株の雪高し

世の中を知らねば人の雪見哉

丈低き夷の家や雪の原

五六人熊擔ひ来る雪の森

一つ家のともし火低し雲の原

仲町や禿もまじり雪掻す

古園や桃も李も雪の花

声悲し鴉の腹に雪を吹く

町近く来るや吹雪の鹿一つ

蓑はあれど笠はあれど雪にわれ病めり

夜明からふれども雪の積まぬげな

杉垣の上から雪の上野哉

鴛鴦の羽に薄雪つもる静さよ

ちらちらと初雪ふりぬ波の上

合羽つゞく雪の夕の石部駅

南天に雪吹きつけて雀鳴く

市中や雪ちらちらと昼嵐

水涸れて雪つもりたる筧哉

ふりやむや雪に灯ともる峰の寺

古庭の雪に見出だす葵哉

不盡の山雪盛り上げし姿哉

水汲むや雪の合羽の女とは

大雪や関所にかゝる五六人

大雪の上にほつかり朝日哉

風雪を吹きつけて馬逡巡す

夜の雪辻堂に寝て美女を夢む

夜の雪やどこまで小き足の跡

雪かいかい王城の松美なる哉

雪の夜や隅田の渡し舟はあれど

病中雪四句

雪ながら竹垂れかゝる手水鉢

雪ふるよ障子の穴を見てあれば

いくたびも雪の深さを尋ねけり

雪の家に寝て居ると思ふ許りにて

障子明けよ上野の雪を一目見ん

雪女旅人雪に埋れけり

霙 みぞれ

棕櫚の葉のばさりばさりとみぞれけり

枯野 かれの

枯野原団子の茶屋もなかりけり

烏飛び牛去りて枯野たそかるゝ

四方八方枯野を人の通りける

更くる夜の枯野に低し箒星

草鞋薄し枯野の小道茨を踏む

三日月や枯野を帰る人と犬

赤いこと冬野の西の富士の山

何もなし墓原ばかり枯野原

葬礼の旗ひるがへる枯野哉

めいめいに松明を持つ枯野哉

低き木に月上りたる枯埜哉

馬消えて鳶舞上る枯野哉

馬に乗つて北門出れば枯野哉

足もとに青草見ゆる枯野哉

汽車道に鳩の下り居る枯野哉

提灯の一つ家に入る枯野哉

提灯の星にまじりて枯野哉

一つ家に鉦打ち鳴らす枯野哉

わらんべの犬抱いて行く枯野哉

鉦も打たで行くや枯野の小順礼

冬田 ふゆた

雁さわぐ冬の田面の月もなし

其はてに海の見えたる冬田哉

きぬぎぬの大門出れば冬田哉

冬川 ふゆかわ

冬川や魚の群れ居る水たまり

冬川や家鴨四五羽に足らぬ水

物やあらん烏集まる冬の川

氷 こおり

汐落ちて氷の高き渚哉

日かゝやく諏訪の氷の人馬哉

上げ汐の氷にのぼる夜明哉

森の中に池あり氷厚き哉

汐落ちてみを杭高き氷哉

沼の隅に枯蘆残る氷哉

枯菰の折れも盡さで氷哉

水鳥の浮木に並ぶ氷哉

歌の濱も上野の嶋も氷りけり

山陰に日のさゝぬ池の氷哉

裏不二の小さく見ゆる氷哉

氷伐る人かしがまし朝嵐

氷る田や八郎稲荷本願寺

忍恋

漏らさじと恋のしがらみ氷るらん

冬山 ふゆやま

冬山の底に温泉の烟哉

狼に逢はで越えけり冬の山

鷹 たか

野路の人鷹はなしたるけしき哉

それ鷹の斜めに下りる枯野哉

鷹狩や鶴の毛を吹く麦畑

鷹鶴を押へて落ぬ麦畑

暖鳥 ぬくめどり

思ひわびてはなす夜もあり煖鳥

梟 ふくろう

梟の眼に冬の日午なり

千鳥 ちどり

川千鳥家も渡しもなかりけり

満汐や清盛の塚に千鳥鳴く

満汐や千鳥鳴くなる橋の下

路ばたに饂飩くふ人や川千鳥

背戸へ来て崩れてしまふ千鳥哉

雪洞に千鳥聞く須磨の内裏哉

待恋

艪の昔や我背戸来べく千鳥鳴く

水鳥 みずとり

水鳥や菜屑につれて二間程

鴨 かも

鴨一羽飛んで野川の暮にけり

鴨啼いてともし火消すや長た亭

夜を鳴いて昼を寝て居る小鴨哉

鴛鴦 おしどり・おし

釣殿の下へはいりぬ鴛二つ

人間のやもめを思へ鴛二つ

鴛鴛の向ひあふたり並んだり

鷦鷯 みそさざい

味噌桶のうしろからどこへ鷦鷯

草菴

菜屑など散らかしておけば鷦鷯

さゝ鳴 ささなき

さゝ鳴くや鳴かずや竹の根岸人

鯨 くじら

大きさも知らず鯨の二三寸

声かけて鯨に向ふ小舟哉

乾鮭 からざけ・からさけ

里町や乾鮭の上に木葉散る

草庵の富貴は越の乾鮭南部の山鳥を憎られて

乾鮭と山鳥とつるす廚哉

鰤 ぶり

灯ともして鰤洗ふ人や星月夜

河豚 ふぐ

鰒生きて腹の中にてあれる哉

河豚くふて死ともないか誠かな

河豚くふて其夜死んだる夢苦し

鰒で死んで蓮の台に生ればや

海鼠 なまこ

海鼠喰ひ海鼠のやうな人ならし

晴れもせず雪にもならず海鼠哉

無為にして海鼠一萬八千歳

氷魚 ひお

氷魚もよらず風の田上月の宇治

氷魚痩せて月の雫と解けぬべし

冬動物雑 

日蓮宗四個格言

念仏は海鼠真言は鰒にこそ

帰花 かえりばな

木老いて帰り花さへ咲かざりき

我死せりと夢みたるよしある人より申おこせしに

腐り盡す老木と見れば返り花

茶花 ちゃばな

野はづれに茶の花は誰が別荘ぞ

藪陰に茶の花咲きぬ寺の道

茶の花に鰈乾したり門徒寺

茶の花に梅の枯木を愛す哉

茶の花や藁屋の烟朝の月

茶の花の中行く旅や左富士

茶の花の中にまじりて茶実哉

茶の花や詩僧を会す万福寺

茶の花や花を以てすれば梅の兄

病あり

茶の花の二十日あまりを我病めり

山茶花 さざんか

植木屋の山茶花早く咲にけり

山茶花や病みて琴ひく思ひ者

山茶花のこぼれかゝるやかなめ垣

枇杷花 びわのはな

咲いて散りし北の家陰の枇杷の花

紅葉散 もみじちる

錦楓崕 愚庵十二勝の内

紅葉散りて夕日少し苔の道

落葉 おちば

森淋し小娘一人落葉掻く

風の音日の入る森の落葉哉

ひらひらと吾に落たる木葉哉

地車や石を積み行く落葉道

久しぶりに妹がり行けば落葉哉

妹が垣根古下駄朽ちて落葉哉

落葉して塔より低き銀杏哉

落葉して老木怒る姿あり

落葉してやどり木青き梢哉

道端や落葉ちらばる古著店

紙燭して落葉の中を通りけり

更くる夜を落葉音せずなりにけり

病中

木の葉をりをり病の窓をうつて去る

ある夜の夢に豊太閤を祭りたりといふ御社に詣でゝ左の一句を口ずさみたりと見てさめたいり

境内は賑やかなれど落葉哉

枯葉 かれは

枯葉鳴るくぬ木林の月夜哉

冬木 ふゆき

二三本冬木とりまく泉哉

片側は冬木になりぬ町はつれ

田の畝のあちらこちらに冬木哉

痩村に行列とまる冬木かな

古道に馬も通らぬ冬木哉

ぼくぼくと冬の木並ぶ社哉

冬木立 ふゆこだち

めらめらと焼ける伽藍や冬木立

三芳野に桜少し冬木立

家二軒畑つくりけり冬木立

いくさやんで人無き村や冬木立

冬木立のうしろに赤き入日哉

何もなし只冬木立古社

妖怪体十二句の内

冬木立骸骨月に吟じ行く

隅田川端艇競漕

冬木立御座を設けて川に臨む

ある人に俳句教へよと所望せられて

古道の栞も朽ちぬ冬木立

枯榎 かれえのき

小幟や狸を祭る枯榎

枯柳 かれやなぎ

枯柳八卦を画く行燈あり

水仙 すいせん

水仙や土塀に見こす雪の山

水仙の花咲くことを忘れたり

水仙と炭取と並ぶ夜市哉

水仙の莟に星の露を孕む

水仙の露に眼の塵を洗はんか

禿倉暗く水仙咲きぬ藪の中

月落ちたり水仙白き庭の隅

有明の水仙剪るや庭の霜

新築

何も彼も水仙の水も新しき

冬枯 ふゆがれ

冬枯れて鳥居一つや土手の上

冬枯や神住むべくもなき小宮

冬枯や粲爛として阿房宮

冬枯れて馬鹿も利口もなかりけり

冬枯や百穴見ゆる雑木山

冬枯や提灯走る一の谷

冬枯や草鞋くはへて飛ぶ鴉

冬枯や小笹の中の藪柑子

冬枯や庚申堂の小豆飯

冬枯や八百屋の店の赤冬瓜

冬枯や塵のやうなる虫が飛ぶ

冬枯の地蔵の辻に追剥す

草枯や土鍋を洗ふ化粧井

明寺の霜枯に鳴く鼬哉

裾山や根笹まじりに冬枯るゝ

草枯や一もと残る何の花

江湖文学発刊

冬枯るゝ筆の穂とこそさては花

日本新聞社忘年会

松生けて冬枯時の酒宴哉

古松塢愚庵十二勝の内

冬枯や曰く庭前の松樹子

枯蘆 かれあし

蘆枯れて烏ものくふ中洲哉

枯芒 かれすすき

風も動かず芒を見れば枯れにけり

此道や只枯芒馬の糞

枯薄人呼ぶ茶屋の婆もなし

枯薄胡人五十騎ばかり行く

誰が夢の骸骨こゝに枯芒

七湯の烟淋しや枯芒

居風呂を焚くや古下駄枯芒

病やゝおこたりて

枯芒障子開くれば吾を招く

爛柯石 愚庵十二勝の一

野狐死して尾花枯れたり石一つ

吼かい

とかくして枯れた芒に油断すな

死恋

枯芒思ひ死ニの墓と記すべし

枯蓮 かれはす

蓮十里盡く枯れてしまひけり

枯芭蕉 かればしょう

此頃は音なくなりぬ枯芭蕉

枯藤 かれふじ

亀戸

藤枯れて昼の日弱る石の牛

枯蔦 かれつた

絶恋

蔦枯れて恋のかけ橋中絶えぬ

枯菊 かれぎく

枯菊に笊干す背戸の日南哉

菊枯れて上野の山は静かなり

菊枯れて松の緑の寒げなり

背戸の菊枯れて道灌山近し

鶏や枯菊の花ふりちぎる

大方の菊枯れ盡きて黄菊哉

植木屋に売残りの菊皆枯るゝ

西うくる背戸に夕日の菊枯るゝ

百菊の同じ色にぞ枯れにける

菊枯れて胴骨痛む主人哉

枯葎 かれむぐら

ものゝ実の蔓もゆかしや枯葎

冬菜 ふゆな

村近く冬菜植ゑたる畠哉

干菜 ほしな

したゝかに干菜つりたり一軒家

冬植物雑 

古庭の菊も芒も枯れにけり

庭前

萩も菊も芒も枯れて松三本

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