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寒山落木一 表紙

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正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

寒山落木三

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明治27年

初めの冬

寒 かん

のら猫をかゝえて寝たる寒さ哉

狐火の潮水にうつる寒さ哉

天暗うして大仏の眼の寒哉

人一人二人寒しや大広間

古城の石かけ崩す寒さ哉

むさゝびの石弓渡る寒さ哉

星落ちて石となる夜の寒さ哉

吉原の裏道寒し卵塔場

日のあたる石にさはればつめたさよ

演劇夢結蝶に鳥追

大名をゆすりにかゝる寒さ哉

炭 すみ

炭売の休むか粉炭石の上

猿殿の小便くさしいぶり炭

火鉢 ひばち

古寺に火鉢大きし台處

傾城の足音更ける火鉢哉

とりまくや殿居する夜の大火鉢

湯婆 ゆたんぽ・たんぽ

大仏の麓に寝たる湯婆哉

埋火 いけび

おらが在所は埋火の名所哉

蒲団 ふとん

灯を消せば蒲団走るや大鼠

毛蒲団の上を走るや大鼠

髪置 かみおき

髪置や惣領の甚六にて候

頭巾 ずきん

頭巾ぬげば皆坊主でもなかりけり

納豆 なっとう

禅僧や仏を売て納豆汁

納豆汁卜伝流の翁かな

紙衣 かみこ

飼犬に袖ひかれたる紙衣哉

雪 ゆき

湖青し雪の山〃鳥帰る

蛸隠す夜の吹雪の小蓑かな

雪の山壁の崩れに見ゆる哉

千年の大寺一つ雪野かな

引汐や薄雪つもる沖の石

寺一つむつくりとして雪の原

霰 あられ

八陣の石崩れたる霰哉

大粒の霰降るなり石畳

獺の橋杭つたふ氷哉

霙 みぞれ

獺の橋杭つたふみぞれ哉

人もなし黒木の鳥居霙ふる

霜 しも

朝霜や雫したゝる塔の屋根

辻堂に狐の寝たる霜夜かな

霜柱石燈籠は倒れけり

冬月 

門くづれて仁王裸に冬の月

辻番のともし火青し冬の月

氷 こおり

さゆる夜の氷をはしる礫かな

蘆の根のしつかり氷る入江哉

仏立つ大磐石の氷柱哉

ある大名邸の跡にて

金魚死して涸れ残る水の氷哉

枯野 かれの

女狐の石になつたる枯野哉

大木の雲に聳ゆる枯野哉

貝塚に石器を拾ふ冬野哉

鷦鷯 みそさざい

澤庵の石に上るやみそさゝゐ

千鳥 ちどり

おゝ寒い寒いといへば鳴く千鳥

かたまつておろす千鳥や沖の石

海鼠 なまこ

貞女石に化す悪女海鼠に化すやらん

大海鼠覚束なさの姿かな

河豚 ふぐ

大ふぐや思ひきつたる人の顔

釣りあげて河豚投げつける石の上

冬木立 ふゆこだち

建石や道折り曲る冬木立

大庭や落葉もなしに冬木立

村居を訪ふ

冬木立隠士が家の見ゆる哉

寒梅 かんばい

寒梅や欄干低く筑波山

枯薄 かれすすき

芒枯れて千年の野狐石に化す

加賀邸の跡にて

花薄百萬石を枯れにけり

草枯 くさがれ

草枯れて礎残るあら野哉

草枯れて池の家鴨の寒げ也

冬枯 ふゆがれ

冬枯や鳥に石打つ童あり

冬枯の築山淋し石燈籠

冬枯や大きな鳥の飛んで行く

冬枯や王子の道の稲荷鮨

根岸草庵

冬枯や隣へつゞく庵の庭

水仙 すいせん

宗匠が床の水仙咲きにけり

百両の石は小さし水仙花

枯蔦 かれつた

枯蔦や石につまづく宇都の山

葱 ねぎ

美女賛

指五本葱の雫落るべう

明治27年

終リノ冬

初冬 はつふゆ

初冬の葉は枯れながら菊の花

淋しさもぬくさも冬のはじめ哉

立冬 りっとう

冬立つや背中合せの宮と寺

神無月 かんなづき

女乗る宮の渡しや神無月

道はたや鳥居倒れて神無月

窓あけて見れば舟行く神無月

十月の櫻咲くなり幼稚園

十月の畠に赤し蕎麦の茎

十月のやもめになりし螽かな

十月の鶴見つけたり田子の浦

十月や鳶舞ひかゝる昼の月

小春 こはる

摘みこんで杉垣低き小春かな

谷間や小春の家の五六軒

苑豆の生える小春の日向かな

魚見えて小春の水のぬるみかな

痩村や小春を受くる家の向

砂濱や舟の底干す小春凪

村は小春山は時雨と野の広さ

御社壇に小春の爺が腰かけて

町はづれ小春の山の見ゆるかな

幾重にも村かさなりて小春かな

霜月 しもつき

眺望

霜月やすかれすかれの草の花

霜月や痩せたる菊の影法師

霜月の小道にくさる紅葉かな

霜月や石の鳥居に鳴く鴉

寒 かん

朝日さす材木河岸の寒さかな

大船の干潟にすわる寒さかな

傾城を舟へ呼ぶ夜の寒さかな

筑波嶺に顔そむけたる寒さかな

剥かるゝ程に伸ぶ程に棕櫚の寒かな

薪舟の関宿下る寒さかな

紙燭消えて安房の灯見ゆる寒さかな

古辻に郵便箱の寒さかな

森の上に富士見つけたる寒さかな

此頃の富士大きなる寒さかな

藁屋根に鮑のからの寒さかな

花もなし柩ばかりの寒さかな

新田に家建ちかゝる寒さかな

星こぼす天の河原の寒さかな

星絶えず飛んであら野の寒さかな

星絶えず飛んで冬野のひろさ哉

野の中にー本杉の寒さかな

黒船の雪にもならで寒げなり

物もなき神殿寒し大々鼓

足もとに寒し大きな月一つ

新阪

仏でもなうて焚かれぬ寒さかな

芭蕉翁像

寒き日を土の達磨に向ひける

燃料になるべき仏さへもたねば

目の前に顔のちらつく寒さかな

亡友の墓にまうでゝ

名處は冬菜の肥ゆる寒さかな

冬され ふゆされ・ふゆざれ

三河嶋村

冬されを人住みかねて明屋敷

冬されて何の香もなし野雪隠

冬されて立臼許り門の内

冬されや稲荷の茶屋の油揚

冬されて火焔つめたき不動かな

常磐木や冬されまさる城の跡

凍 いて

佐倉

ともし行く灯や凍らんと禰宜が袖

冬日 ふゆひ

冬の日の刈田のはてに暮れんとす

冬の日の暮れんとすなり八ツ下り

師走 しわす

高麗船の宝積みたる師走かな

大寺の静まりかへる師走かな

大幅の達磨かけたる師走かな

塵にまじる銭さへ京の師走かな

海広し師走の町を出はなれて

大筆にかする師走の日記かな

霙にもならで師走の大雨かな

大声にさわぐ師走の鴉かな

師走晦日銭隕つること雨の如し

淋しさをにらみあふたる師走かな

歳暮 せいぼ

顔の如くこしらへたる瓢の火桶の図に

追風吹かば何處まで行くぞ年の船

行く年の行きどまりなり袋町

行く年の暖簾染むる小家かな

白梅の黄色に咲くや年の内

行く年のたゞあてもなく船出かな

草枕今年は伊勢に暮れにけり

馬に乗る嫁入見たり年の暮

行く年に追ひつかれけり跛馬

行く年の大河滔〃と流れけり

行く年や石にくひつく牡蠣の殻

除夜 じょや

太極にものあり除夜の不二の山

冬時候雑 

嶋原や笛も大鼓も冬の音

青〃と冬を根岸の一つ松

下総や冬あたゝかに麦畠

見下すや冬の日向の十箇村

神の留守 かみのるす

ちゝめくや神のお留守の鳩雀

うつせみの羽衣の宮や神の留守

神迎 かみむかえ

乗掛の旅僧見たり神迎

御命講 おめいこう

凩も負けて大鼓の木魂かな

新嘗祭 にいなめのまつり

籾すりの新嘗祭を知らぬかな

吹革祭 ふいごまつり

餅ぬくき蜜柑つめたき祭りかな

亥子 いのこ

雪空の雪にもならで亥子かな

酉市 とりのいち

畦道や月も上りで大熊手

時雨にもあはず三度の酉の市

世の中も淋しくなりぬ三の酉

冬至 とうじ

苫低く裏に日のさす冬至かな

爐開 ろびらき

爐開いて僧呼び入るゝ遊女かな

爐開きや炭も桜の帰り花

火燵 こたつ

巨燵して語れ真田が冬の陣

夜の雨昼の嵐や置巨燵

いくさから便とゞきし巨燵かな

人足らぬ巨燵を見ても涙かな

われは巨燵君は行脚の姿かな

火桶 ひおけ

芭蕉翁像に対す

拝領の錦張りたる火桶かな

絵屏風の倒れかゝりし火桶かな

炭竃 すみがま

火の絶えし小野の炭竈小夜嵐

冬搆 ふゆがまえ

庵破れて冬搆へすべくあらぬかな

藁垣の菜畑めぐるや冬搆

藁掛けて冬搆へたり一つ家

冬籠 ふゆごもり

冬ごもり男ばかりの庵かな

砂村や狐も鳴かず冬籠り

裏藪の竹盗まれし冬籠り

箒さはる琴のそら音や冬籠り

松すねて門鎖せり人冬籠る

恋せじと冬籠り居れば蜘の糸

三味線や里ゆたかなる冬籠

一村は留守のやうなり冬籠

一村は冬こもりたるけしきかな

一村は青菜つくりて冬籠

かゆといふ名を覚えたか冬籠

麦蒔 むぎまき

清国捕虜廠舎

名處の麦蒔くまでに古りにけり

鉢敲 はちたたき

夜嵐の千本通り鉢敲き

夜興曳 よこひき・よこうひき

有明やかけ橋戻る夜興引

薬喰 くすりぐい

薬喰す人の心の老いにけり

納豆 なっとう

山僧や経読み罷めて納豆打つ

納豆汁腹あたゝかに風寒し

風呂吹 ふろふき

大きなるをこそ風呂吹と申すらめ

蕎麦湯 そばゆ

信州の寒さを思ふ蕎麦湯哉

紙衣 かみこ

信州より蕎麦粉を贈られて

猿引の紙衣裂かるゝ猿の爪に

紙衣着て藪陰戻る月夜かな

蒲団 ふとん

ものゝ香のゆかしや旅の薄蒲団

涕 

水鼻に旅順を語る老女かな

大根引 だいこんひき

大根引く歌こそあらめ三河嶋

大根干 だいこんほす

小室節の起りしところと聞くに

日暮や大根掛けたる格子窓

根岸を出て

子を負ふて大根干し居る女かな

切干の大根の中の唐辛子

年の市 としのいち

押さるゝや年の市人小夜嵐

徴発の馬つゞきけり年の市

古暦 ふるごよみ

何となく奈良なつかしや古暦

あつめ来て紙衣に縫はん古暦

古暦花も紅葉も枕紙

節季候 せっきぞろ・せきぞろ

節季候の節季候を呼ぶ明家かな

時雨 しぐれ

しくるゝや何を湯出鱆色に出る

しくれしか裏の竹山朝日さす

しくるゝや岬をめぐる船の笛

しくるゝや鶏頭黒く菊白し

しくれけり豆腐買ひけり晴れにけり

蒟蒻にしぐれ初めけり笊の中

夕日照る時雨の森の銀杏かな

山里や嫁入しぐるゝ馬の上

山の端や月にしぐるゝ須磨の浦

掛稲にしくるゝ山の小村かな

帆柱に月持ちながら時雨かな

竹藪を出れば嵯峨なり夕時雨

曙をしくれて居るや安房の山

金杉や相合傘の初時雨

十月や十日も過ぎて初時雨

幾時雨石山の石に苔もなし

堀内

手拭の妙法講をしくれけり

山崎や時雨の月の朝朗

此頃はどこの時雨に泣いて居る

従軍中の飄亭を憶ふ

なき人のまことを今日にしくれけり

凪 なぎ

乾外生追悼法会

凧や木もなき山の堂一つ

凩や昼は淋しき廓道

凩や海は虚空にひろがりて

凩や葎を楯に家鴨二羽

凩や木立の奥の不二の山

凩や道哲の鉦打ちしきる

凩や鐘撞く法師五六人

凩や落書兀げる仁王門

凩に叫吽の獅子の搆へかな

凩に大仏暮るゝ上野かな

凩の中より月の升りけり

凩ののぞくがらすや室の花

凩の明家を猫のより處

凩によく聞けば千々の響き哉

東京

凩がいやとは余り無分別

中野逍遥を悼む

凩の上野に近きいほりかな

草庵

すわ夜汽車凩山へ吹き返し

人去てあと凩の上野かな

凩に大提灯の静かさよ

浅草

凩に吹かれて来たか二人連

碧梧桐虚子京に来る

凩に吹かれに来たか二人連

霜 しも

饅頭の湯気のいきりや霜の朝

鵯の朝日に飛ぶや霜の原

帆まばらに富士高し朝の霜かすむ

麦の芽のほのかに青し霜の朝

熱帯の草しほれけり今朝の霜

ほつかりと日のあたりけり霜の塔

旭のさすや紅うかぶ霜の不盡

猪のかき崩しけり霜の岨

兵営や霜に荒れたる鴻の台

蓬生や霜に崩るゝ古築地

塩濱の霜かきならす朝日かな

いたいけに霜置く薔薇の莟哉

痩菊に霜置かぬ朝の曇りかな

南天をこぼさぬ霜の静かさよ

朝霜や静かに残る竹の月

朝霜の帆綱に光る日の出かな

朝霜やかれかれ赤き蓼の花

初霜や束ねよせたる菊の花

霜の夜や赤子に似たる猫の声

朝霜や舟流したる橋の下

朝霜の御茶の水河岸静かなり

朝霜やいらかにつヾく安房の海

霜柱 しもばしら

船橋駅

籾敷くや踏めば落ち込む霜柱

隠れ家や未下りの霜柱

霰 あられ

売れ残る炭をおろせば霰かな

呉竹の横町狭き霰かな

竹買ふて裏河岸戻る霰かな

板塀によりもつかれぬ霰かな

星暗く霰うつなり小野木笠

降る程の霰隠れて小石原

甲板に霰の音の暗さかな

霙 みぞれ

大船の楷子をあげる霙かな

雪 ゆき

夜の雪杉の木の間の伽藍哉

初雪の下に火を焚く小舟かな

初雪に祇園清水あらはれぬ

初雪や海を隔てゝ何處の山

初雪の中を淀川流れけり

雪の跡人別れしと見ゆるかな

雪や来ん衛士の篝火影さわぐ

有明の雪の清水灯残れり

鐘撞いて雪になりけり三井の雲

紙漉や初雪ちらりちらり降る

一村は雪にうもれて煙かな

筑波嶺の雪にかゝやく朝日かな

新庭やほつちり高き雪の笹

海の上に初雪白し大鳥居

厳嶋

初雪やあちらこちらの寺の屋根

奈良

見渡せば初雪つもる四里四方

東京

上州の山に雪見るあしたかな

郊外眺望

初冬の月裏門にかゝりけり

冬月

鶯の凍へ死ぬらん冬の月

うしろからひそかに出たり冬の月

寒月や細殿荒れて猫の声

よるべなき冬の野川の小魚かな

冬川

冬川や菜屑流るゝ村はづれ

冬川に捨てたる犬の屍かな

冬川の菜屑啄む家鴨かな

大石のころがる冬の河原かな

冬川や砂にひつゝく水車

冬田 ふゆた

つらつらと雁並びたる冬田かな

稗時に案山子の残る冬田かな

長長と冬田に低し雁の列

吉原の廓見えたる冬田かな

蜜柑剥いて皮を投げ込む冬田かな

身を投げて螽死なんとす冬田かな

枯野 かれの

商人の敵地にはいる枯野かな

旅人の咄しして行く枯野かな

その果に小松の並ぶ枯野かな

ところどころ菜畑青き枯野かな

伸び上れば海原見ゆる枯野かな

汽車道の此頃出来し枯野かな

都出て枯野へ上る渡しかな

日のさすや枯野のはての本願寺

野は枯れて隣の国の山遠し

野は枯れて杉二三本の社かな

学校の旗竿高き冬野かな

冬山 ふゆやま

冬山やごぼごぼと汽車の麓行く

氷 こおり

古沼の水田つゞきに氷かな

不忍に朝日かゝやく氷かな

聞き送る君が下駄遠き氷かな

大船や動けばわれる薄氷

檐下や金魚の池の薄氷

染汁の紫氷る小溝かな

果も見えず氷を走る礫かな

竹竿や妹が掛けたる氷面鏡

千鳥 ちどり

上げ汐の千住を越ゆる千鳥かな

鴨 かも

夜更けたり何にさわだつ鴨の声

灯ちらちら鴨鳴く家のうしろかな

水鳥 みずとり

水鳥や中に一すぢ船の道

鴛鴦 おしどり・おし

薄氷を踏むをし鳥の思ひかな

古池のをしに雪降る夕かな

古池に亡き妻や思ふ鴛一羽

積もりあへず思ひ羽振ふ雪の鴛

をし鳥や嵐に吹かれ月に流れ

鷹 たか

ましらふの鷹据ゑて行くあら野哉

はし鷹の拳はなれぬ嵐かな

梟 ふくろう

梟の思ひかけずよ枯木立

梟をなぶるや寺の昼狐

鯨 くじら

鯨よる大海原の静かさよ

鰒 ふぐ

来年の事言へば鰒が笑ひけり

海鼠 なまこ

風もなし海鼠日和の薄曇り

引汐の錨にかゝる海鼠かな

天地を我が産み顔の海鼠かな

牡蠣 かき

大船の蠣すり落す干潟かな

妹がりや荒れし垣根の蠣の殻

冬蝿 ふゆのはえ

日あたりや障子に羽打つ冬の蝿

古筆や墨嘗めに来る冬の蝿

落葉 おちば

御手の上に落葉たまりぬ立仏

拾舟の落葉掃き出す日和かな

吹きたまる落葉や町の行き止まり

首入れて落葉をかぶる家鴨かな

山の井の魚浅く落葉沈みけり

裏口や落葉掃き込む大竈

夕風や木の葉吹き寄する石畳

大村の鎮守淋しき落葉かな

今日もまた一斗許りの落葉かな

細き道のしきりに曲る落葉かな

散るを掃き掃くを燃やして木葉哉

捨てゝ置く箒埋めて落葉かな

延宝の立石見ゆる落葉かな

尼寺の仏壇浅き落葉かな

昼中の小村淋しき落葉かな

街道の馬糞にまじる落葉かな

ほそほそと烟立つ茶屋の落葉かな

鶏の垣を出て来る落葉かな

蛛の囲に落ちて久しき木の葉かな

飛ぶが中に蔦の落葉の大きさよ

落葉してむつかしげなる枳穀かな

落葉焚いて人無き寺の日和かな

木の葉散る奥は日和の天王寺

木の葉はらはら幼子に逢ふ小阪かな

落葉焚く烟の細し卵塔場

山行けば御堂御堂の落葉かな

紅葉散 もみじちる

池上

杉暗く紅葉散るなり御幸橋

蓮枯れて泥に散りこむ紅葉かな

一葉二葉紅葉散り残る梢かな

冬木立 ふゆこだち

棒杭や四ツ街道の冬木立

日暮里や只植木屋の冬木立

大雨のざんざとふるや冬木立

菜を掛けし家こそ見ゆれ冬木立

見れば昼の月かゝりけり冬木立

其奥に富士見ゆるなり冬木立

昔寵愛の女性みけり冬木立

銃提げし士官に逢ひね冬木立

ところどころ烟突高し冬木立

冬木立五重の塔の聳えけり

冬木立千住の橋の見ゆるなり

冬木立道灌山の鳥居かな

冬木立道灌山の麓かな

小鳥さへ啼かず冬木立静かなり

菜畑や小村をめぐる冬木立

三河嶋

誰様の御下屋敷ぞ冬木立

根岸

奉納の白き幟や冬木立

砂村

町中に聖天高し冬木立

待乳山

鳥帰る冬の林の塔暮れたり

枯柳 かれやなぎ

郊外

嶋原の入口淋し枯柳

柳枯れぬ菜畠めぐる藁の垣

古池や柳枯れて鴨石に在り

枯木 かれき

一もとの榎枯れたり六地蔵

無花果の鈍な枯れ様したりけり

水落ちて橋高し枯木二三本

帰花 かえりばな

川崎や畠は梨の帰り花

茶花 ちゃばな

からたちの中に茶の花あはれなり

茶の花や庭にもあらず野にもあらず

茶の花や坊主頭の五つ六つ

山茶花 さざんか

山茶花に犬の子眠る日向かな

山茶花に恋ならで病める女あり

山茶花や墓をとりまくかなめ垣

山茶花に猶なまめくや頽れ門

山茶花に鉦鳴らす庵の尼か僧か

寒椿 かんつばき

寒椿今年は咲かぬやうすなり

枇杷花 びわのはな

さはるべき雲さへ持たず枇杷の花

枯尾花 かれおばな

砂村や茶屋のかたへの枯尾花

川狭く板橋高し枯尾花

枯尾花焼場へ曲る小道かな

枯蘆 かれあし

枯蘆の折れも盡さす捨小舟

枯蘆につゞく千住の木立かな

片岸の蘆ことごとく枯れにけり

枯蘆や同じ處に拾小舟

枯荻 かれおぎ

枯荻や日和定まる伊良古崎

枯蓼 かれたで

蓼枯れて隠れあへず魚逃げて行

枯蔦 かれつた

枯蔦のしがみついたる巌かな

枯菊 かれぎく

傘さして菊の枯れたる日和かな

枯蓬 かれよもぎ

枯蓬柩見え来る野道かな

冬枯 ふゆがれ

冬枯に飯粒ひろふ雀かな

冬枯の野末につゞく白帆かな

冬枯の荒れて菊未だ衰へず

冬枯の中に小松の山一つ

冬枯や遥かに見ゆる眞間の寺

冬枯や礎見えて犬の糞

冬枯や張物見ゆる裏田圃

恋にうとき身は冬枯るゝ許りなり

道灌の山吹の里も冬枯れぬ

冬枯の山はうつくしき物許り

新嘗祭 にいなめのまつり

十二月九日祝捷大会

冬枯の根岸淋しや日の御旗

冬枯や手拭動く堀の内

妙法寺

冬枯のたぐひにもあらず眼の光り

霜枯 しもがれ

達磨賛

霜枯や僅かに高き誰の塚

霜枯や誰がおくつきの姫小松

霜枯や障子懸けたる明屋敷

霜枯の佐倉見あぐる野道かな

草枯 くさがれ

いさゝかの草枯れ盡す土橋かな

道の辺や枸杞の実赤き枯葎

草枯や寺の名残の井戸一つ

水草の枯れみ枯れずみ水の中

なかなかに枯れも盡さず畦の草

寒菊 かんぎく

寒菊や大工は左甚五郎

寒菊や村あたゝかき南受

寒菊に爪剪る橡の日さしかな

水仙 すいせん

蛸壷に水仙を活けおほせたり

芋の跡水仙植ゑてまばらなり

薄氷の中に水仙咲きにけり

水仙に今様の男住めりけり

水仙や朝日のあたる庭の隅

八手花 やつでのはな

八手咲いて茶坐敷としも見ゆるかな

冬菜 ふゆな

棒入れて冬菜を洗ふ男かな

桶踏んで冬菜を洗ふ女かな

葱 ねぎ

山里や木立を負ふて葱畠

霜月のうら枯れんとす葱畠

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