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寒山落木一 表紙

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正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

寒山落木二

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廿六年 はじめの冬

寒 かん

旃檀の実ばかりになる寒さ哉

夢中人を送りて

から尻のうしろは寒き姿かな

火桶 ひおけ

俊成のなでへらしけり桐火桶

炭 すみ

炭売の帰りは軽し二貫文

奥山の木の葉もまじる粉炭哉

水仙にはたきかけたる粉炭かな

一冬や簀の子の下の炭俵

埋火 いけび

埋火の夢やはかなき事許り

紙衣 かみこ

俳諧のはらわた見せる紙衣かな

千早ふる紙衣久しき命かな

傾城の泪にやれし紙衣かな

頭巾 ずきん

気安さは頭巾を老の仇名にて

茶の花をかざゝばいかに丸頭巾

雪車 そり

雪車引て笹原帰る月夜かな

皸 あかぎれ

あかゞりやまだ新嫁のきのふけふ

納豆 なっとう

やうやうに納豆くさし寺若衆

傾城の噂を語れ納豆汁

ふぐ 

ふぐ汁やきのふは何の薬喰

海鼠 なまこ

世の中をかしこくくらす海鼠哉

老子

瓦とも石とも扨は海鼠とも

渾沌をかりに名づけて海鼠哉

鴨 かも

鴨のなく雑木の中の小池哉

日あたりの入江にたまる小鴨哉

つるされて尾のなき鴨の尻淋し

寒月 かんげつ

寒月や立枯の芭蕉ものものし

寒月や何やら通る風の音

寒月や山を出る時猶寒し

氷 こおり

恐ろしき鴉の觜や厚氷

霙 みぞれ

みぞるゝやふけて冬田の薄明り

霰 あられ

竹垣の外へころげる霰かな

燈心のたばにこぼさぬ霰かな

陣笠のそりや狂はん玉霰

根岸

呉竹の名に音たてゝ霰哉

ある文のあとに

藻汐草かきあつめたる霰哉

雪 ゆき

杉の雪一町奥に仁王門

雪の門叩けば酒の匂ひけり

白雪の筆拾山に墨つけん

雪の野にところところの藁屋哉

雲の跡木履草鞋の別れかな

不忍池

嶋の雪弁天堂の破風赤し

日頃烏の来て庵の屋根こつこつとつゝくに此雪ふりてよりたえて其音を聞かねば

屋根の雪鴉の觜のみじかさよ

灯ちらちら木の間に雪の家一つ

火やほしき漁村の雪に鳴く千鳥

松の雪ほたりほたりとをしい事

竹折れて雪は隣へこほしけり

馬の尻雪吹きつけてあはれなり

首入れて巨燵に雪を聞く夜哉

有明に雪つむ四條五條かな

裏窓の雪に顔出す女かな

ちろちろと夕餉たく火や笘の雪

面白や家はやかれて雪の旅

面白やかさなりあふて雪の傘

新潟

青みけり八千八水雪の中

わびしさや団爐裏に煮える榾の雪

根岸草庵 二句

我庵のものぞ上野の杉の雪

我菴や上野をかざす雪明り

吹雪 ふぶき

椽側になくや吹雪のむら雀

あら鷹の眼血ばしる吹雪かな

通天の橋裏白きふゝき哉

雪仏 ゆきぼとけ

雪仏眼二つは黒かりし

はしためが水かけてけり雪仏

雪仏われからにらみ崩れけり

小春 こはる

唖の子の雀追はへる小春かな

枯枝に雀むらがる小春かな

西新井

鳩眠る屋根や小春の大師堂

初冬 はつふゆ

初冬の家ならびけり須磨の里

霜月 しもつき

霜月や山の境の茶の木原

霜月や内外の宮の行脚僧

冬日 ふゆひ

冬の日の小藪の隅に落ちにけり

述懐

冬の日の筆の林に暮れて行く

寒さ さむさ

媒にはしる鼬の寒さ哉

大名は牡丹のお間の寒さ哉

なきあとに妹が鏡の寒さ哉

けき然と牛解く音の寒さ哉

追剥の出るてふ松の寒さ哉

寝殿に蟇目の音の寒さ哉

うたゝねはさめて背筋の寒さ哉

大海のとりとめ難き寒さ哉

きぬきぬに念仏申す寒さ哉

入棺の釘の響きや夜ぞ寒き

うねうねと兀山寒し三河道

通されて子牛の穴の鼻寒し

ほつちりと味噌皿寒し膳の上

旭のうつる河岸裏寒し角田川

熱田

むら雲の剣を拝む寒さ哉

雅俊不犯の鐘うたせたる事を

鐘うてば不犯とひゞく寒さ哉

飄亭出営

三年の洋服ぬぎし寒さ哉

神戸の錬卿に寄す

思ひやる都のあとの寒さ哉

鬼の念仏の図に

枯れ残る角寒げ也鉦の声

百鬼夜行の図

一ッ目も三ッ目も光る寒さ哉

師走 しわす

板橋へ荷馬のつゞく師走哉

近道に氷を渡る師走哉

小鼠の行列つゞく師走哉

一休の蛸さげて行く師走哉

婚礼の嶋台通る師走哉

鳳輦の静かに過ぐる師走哉

悠然と大船かゝる師走哉

竹藪に師走の月の青さ哉

風吹て白き師走の月夜哉

山里の空や師走の凧一つ

静かさや師走の奥の智恩院

年内立春 ねんないりっしゅん

春立て花の気もなし年の内

春立て鴉も知らず年の内

大三十日 おおみそか

宮様の門静かなり大三十日

元日の餝りながらに大三十日

又三百六十五度の夕日哉

あすあすと言ひつゝ人の寝入けり

春待つ はるまつ

春待つや小田の雁金首立てゝ

歳暮 せいぼ

年の波世渡りのかぢをたえてけり

居酒屋に今年も暮れて面白や

老のくれくれぐれもいやと申ししに

行く年にのりあふ淀の夜舟哉

たらちねのあればぞ悲し年の暮

一年の夢さめかゝる寒さかな

世の中やこんな事して年の行く

腫物の血を押し出すや年の暮

老憎しつもる年波打ては返らず

一ふりの名刀買ひぬ年の暮

香煙の美人にもならず年暮れぬ

王事蹇〃蓑着て年の暮れにけり

風吹て今年も暮れぬ土佐日記

天人に舞はせて見ばや年の空

行年や並びが岡の歌法師

行年を跛の女房静かなり

行年を紅粉白粉に京女

冬雑 

きぬぎぬの鴉見にけり嵯峨の冬

寄席に遊びて

とにかくにをかしき冬の扇哉

十夜 じゅうや

薪わりも甥の僧もつ十夜哉

渋色の袈裟きた僧の十夜哉

牛も念仏聞くや十夜の戻り道

鬼婆〃の角を折たる十夜哉

鄙人のかしこ過ぎたる十夜哉

神送り かみおくり

風吹て鈴鹿は寒し神送

裏門はあけたまゝなり神送

達磨忌 だるまき

達磨忌は去年のけふの心哉

達磨忌やけふ煙草屋の店開き

達磨忌や更けて熟柿の落つる音

達磨忌や赤きもの皆吹落し

爐開 ろびらき

爐開きや蟇はいづこの橡の下

爐開きや越の古蓑木曽の笠

爐開きの客もあるじも盲かな

髪置 かみおき

髪置や僧になるべき子は持たず

顔見せ かおみせ

顔見せや朔日の月ありやなし

顔見せや朝霜匂ふ紅の花

冬籠 ふゆごもり

河豚くはぬ人や芳野の冬籠

案を拍て鼠驚くや冬籠

書燈夜更けて鶏鳴くや冬籠

笛一つ釘にかけたり冬籠

冬籠り琴に鼠の足のあと

冬籠り三味線折て爐にくべん

草庵

薪をわるいもうと一人冬籠

何とも知れね画に

なぞなぞを解て見せけり冬籠

炭 すみ

炭出しに行けば師走の月夜哉

荷は置て炭売見えず寺の門

炭団 たどん

書の上に取り落したる炭団哉

真黒な手鞠出てくる炭団哉

埋火 いけび

埋火や木曽に旅寝の相撲取

只一つ星か蛍か埋み火か

榾 ほた・ほだ

榾焚くや伊吹を背負ふ一軒家

榾火焚て武庫山颪来る夜哉

榾の火や宿かる家の種が嶋

火桶 ひおけ

いたいけに童の運ぶ火桶哉

関守の睾丸あぶる火鉢哉

番小屋に昼は人なき火鉢哉

巨燵 こたつ

妹なくて向ひ淋しき巨燵哉

蒲団 ふとん

傾城は痩せて小さき蒲団哉

こしらへて見るや蒲団の東山

重ねても軽きが上の薄蒲団

寒さうに母の寝給ふ蒲団哉

紙衣 かみこ

うき人に見せじ紙衣の袖の皺

十一月二十三日赤阪離宮菊花拝観を許さる紋付羽織袴なくて得行かざりければ勧むる人にことわりていひやりたる其はしに

伝へ来て陶淵明の紙衣哉

尻やふかん紙衣やぬはん夷紙

頭巾 ずきん

頭巾着て飯くふまでに老いにけり

市中に落ちあふ妻の頭巾哉

頭巾着て人大黒に似たる哉

足袋 たび

律僧の紺足袋穿つ掃除かな

菊枯て垣に足袋干す日和哉

菅笠をかぶせて見ばや枯尾花

芭蕉忌 ばしょうき

麦を蒔く束髪娘京近し

麦蒔 むぎまき

奈良阪や昔男の麦を蒔く

神楽 かぐら

ゆゝしさや内外の宮の神〃楽

篝火に霜うつくしや里神楽

たふとさに寒し神楽の舞少女

庭火 にわび

木立枯れて夜半の庭火のあらは也

玄猪 げんちょ

竈から猫の見て居る亥子哉

吹革祭 ふいごまつり

大鍋に吹革祭の蜜柑かな

夜興引 よこひき・よこうひき

夜興引や寺のうしろの葎道

鉢叩 はちたたき

面白う叩け時雨の鉢叩き

京の夜も此頃さびて鉢叩き

病中

飯くはぬ腹にひゞくや鉢叩き

寒念仏 かんねぶつ

鳥部野にかゝる声なり寒念仏

寒念仏京は嵐の夜なりけり

あの中に鬼やまじらん寒念仏

寒垢離 かんごり

寒こりや思ひきつたる老の顔

網代 あじろ

雨の夜や動きもやらず網代守

納豆 

納豆の味を達磨に尋ねばや

摺小木に鶯来鳴け納豆汁

玉子酒 たまござけ

猩〃を巨燵へ呼ばん玉子酒

薬喰 くすりぐい

豚煮るや上野の嵐さわぐ夜に

鶯に鍋のぞかせじ薬喰

風呂吹 ふろふき

風呂吹や北山颪さめやすき

皸 あかぎれ

あかゞりや京に生れて京の水

あかゞりのわれる夜半や霜の鐘

雪車 そり

引きすてた雪車に来て寝る小犬哉

臘八 ろうはち

臘八や俄かに見ゆる人のやせ

風吹て師走八日といふ日哉

煤払 すすはらい

鼻水の黒きもあはれ煤払

南無阿彌陀仏の煤も払ひけり

牛はいよいよ黒かれとこそ煤払

煤払のほこりを迯て松の鶴

煤払のほこりに曇る伽藍哉

煤払ひ鏡かくされし女哉

来あはした人も煤はく庵哉

梢から烏見て居る煤払ひ

煤掃て金魚の池の曇り哉

岡見 おかみ

煤掃て香たけ我は岡見せん

暦売 こよみようり

暦売侍町の静かなり

衣配 きぬくばり

傾城の紋は何紋衣配り

餅搗 もちつき

餅の音虚空にひゞく十萬戸

節季候 せっきぞろ・せきぞろ

節季候や五條をわたる足拍子

耳遠し節季候何と申やら

追儺 ついな

風吹て鬼逃げて行くけはひあり

大津画の鬼に豆うつねらひ哉

柊さす ひいらぎさす

柊さゝん津〃浦〃の阜頭の先

掛乞 かけごい

掛乞を祈りかへすや小山伏

年木樵 としきこり

浅茅生の小野の奥より年木樵

むつかしや六十年の年木樵

年の市 としのいち

売れ残る奥山松に市の月

昆布さげて人波わくる年の市

明神の鳥居へつゞく年の市

年の市鮭ぬす人を追はへけり

大鼓画賛

雷神の物買ひにくる年の市

歯朶売 しだうり

歯朶売と並んで出たり大原女

年の用意 

蓬莱をいろいろに飾り直しけり

松立てゝ師走の夕日しづか也

年仕舞 

くそまりつ櫛けづりしつ年仕舞

年忘 としわすれ

言の葉も枯れけり年の忘れ草

一日は耳や塞がん年わすれ

時雨 しぐれ

路次口に油こぼすや初しくれ

初しぐれ都の友へ状を書く

病中

医者が来て発句よむ也初しくれ

うちまぎれ行くや松風小夜しくれ

縦横に糸瓜一つをしくれけり

御遷宮一月こえてしくれ哉

しくるゝやいつまで赤き烏瓜

しくるゝや檐より落つる枯あやめ

しくれうとうとして暮れにけり

寺もなき鐘つき堂のしくれ哉

背戸あけて家鴨よびこむしくれ哉

首立てゝ家鴨つれたつしくれ哉

武蔵野や夕日の筑波しくれ不二

比枝一つ京と近江のしくれ哉

遠山を二つに分けて日と時雨

月見えてうそや誠のしくれ哉

塔高し時雨の空の天王寺

松風に筧の音もしくれけり

湖や底にしくるゝ星の数

廻廊に燈籠の星や小夜しくれ

花火して時雨の雲のうつり哉

夕月のおもて過行しくれ哉

花も昔月も昔としくれけり

生憎に烏も見えす初しくれ

しくるゝや山こす小鳥幾百羽

牛つんで渡る小船や夕しくれ

蠣殻の屋根に泣く夜や初しくれ

牛つなぐ酒屋の門のしくれ哉

牛に乗て矢橋へこえん初しくれ

木兎は淋しき昼のしくれ哉

古寺や鼬の顔にしくれけり

穴熊の耳にしぐるゝ夕哉

狐火は消えて野寺の朝しくれ

千軍万馬ひつそりとして小夜しくれ

箱庭の寸馬豆人をしくれけり

しくれては熊野を出る烏哉

山鳥の尾を垂れてゐるしくれ哉

しくるゝや雀のさわぐ八重葎

猿一つ蔦にすがりてしくれけり

含満や時雨の狸石地蔵

牛むれて帰る小村のしくれ哉

蛸の手の切口見えて夕しくれ

名木の紅梅老て初しくれ

帰り花それも浮世のしくれ哉

杉の葉もしくれて立てり縄簾

磯しくれ花も紅葉もなかりけり

しくるゝや芋堀るあとの溜り水

枯蓮のいかに枯れよとしぐるらん

しくるゝや芳野の山の帰り花

しくるゝや古き都の白牡丹

しくるゝや石にこぼるゝ青松葉

水仙は垣根に青し初しくれ

義仲を夢見る木曽のしくれ哉

一村は籾すりやんで夕しぐれ

蒔砂に箒の波や初しくれ

一しくれ京をはつれて通りけり

古池やしくるゝ音の夜もすから

しくるゝや東へ下る白拍子

名所は古人の歌にしくれけり

大江山鬼の角よりしくれける

山城のしくれて明る彦根哉

いろいろの恋をしくるゝ嵯峨野哉

灯かすかに沖は時雨の波の音

松か岡香の烟にしくれけり

しくるゝや旅人細き大井川

つくは山かのもこのものしくれ哉

舟つなぐ百本杭のしくれ哉

きそひ打つ五山の鐘や夕しくれ

杉なりの俵の山をしくれけり

しくるゝや藜の杖のそまるまで

桶の蓋とればしくるゝ豆腐哉

しくるゝやいつこの御所の牛車

しくるゝや胡弓もしらぬ坊か妻

井戸堀の裸しくるゝ焚火哉

膳まはり物淋しさよ夕しくれ

恠談の蝋燭青し小夜しくれ

露店の大傘や夕しくれ

身にしれと紙衣の穴をしくれけり

笠塚に笠のいはれをしくれけり

頬あてや横にしぐるゝ舟の中

傾城のうそも上手にさよしくれ

宗祇去り芭蕉歿して幾時雨

しくれたる人の咄や四畳半

雲助の足の毛しげみしくれけり

化物も淋しかるらん小夜しくれ

泪しぐるゝや色にいでにけり我恋は

しくれけり蒟蒻玉の一むしろ

しくるゝや熊の手のひら煮る音

有明の又しくれけり一くらみ

昼中のあからあからとしくれけり

ふりかへて我身の上のしくれ哉

小夜しくれとのゐ申の声遠し

神戸懐古

しくるゝや平家にならぶ太平記

獺祭書屋

しくるゝや写本の上に雨のしみ

旅中

出女の声にふり出す時雨かな

根岸

鴬のかくれ家見えて初しくれ

芭蕉翁二百年忌

月花の愚をしくれけり二百年

凩 こがらし

凩や海を流るゝ隅田川

凩や空ものすごき遠光り

凩や星吹きこぼす海の上

凩や血にさびついた鼠罠

凩や神馬の歯くきあらは也

凩や白菊痩せて庭の隅

凩や木曽川落つる夜の音

凩や浅間の煙吹ききつて

凩にすごや狂女の花衣

送飄亭

凩に吹き落されな馬の尻

訪人不遇

凩や蝉も栄螺もから許り

獺祭書屋

物は何凩の笠雪の蓑

霜 しも

橋渡る音や霜夜の御所車

朝霜や青菜つみ出す三河嶋

初霜や児の手柏の二おもて

新阪眺望

初霜や朝日を含む本願寺

高山彦九郎画賛

三條の霜に手をつく泪哉

画賛

古寺や百鬼夜行の霜のあと

冬月 

寒月や海にこぼるゝ玉霰

薙刀に寒月高し法師武者

冬の雨 ふゆのあめ

いろいろの時雨は過ぎて冬の雨

冬の雨米つきの裸あはれなり

声氷る庭の小鳥や寒の雨

冬の日 ふゆのひ

牛部屋や冬の入日の壁の穴

初雪 はつゆき

初雪や半分氷る諏訪の海

灰すてゝ日に初雪の待たれけり

初雪や畑より帰る牛の角

雪 ゆき

風吹て雪なき空のもの凄し

ともし火を中にあら野の吹雪哉

松原の見こしに白し雪の山

雪の中へ車推し出す御公家町

惜い事降る程消えて海の雪

寝ころんで牛も雪待つけしき哉

蓑笠に雪持ち顔の案山子哉

雪のくれ乾鮭さげて戻りけり

雪の日や海の上行く鷺一羽

飛鳥山

雪晴れて筑波我を去ること三尺

雪仏 ゆきぼとけ

掛乞をにらむやうなり雪仏

画讃 (雪達摩)

此下に冬寵の蟇眠るらん

霰 あられ

かたかたは霰ふるなり鳰の月

大仏のからからと鳴る霰哉

有明の霰ふるなり本願寺

風吹て霰虚空にほどばしる

りきむ程猶はね返る霰哉

柴漬になぐりこんたる霰哉

枯野 かれの

旅人の蜜柑くひ行く枯野哉

信長の榎残りて枯野哉

里の子の犬引て行枯野哉

一つ家に日の落ちかゝる枯野哉

一村は竹緑なる枯野哉

ほそぼそと三日月光る枯野哉

道二つ牛分れ行く枯野哉

牛車十程ならぶ枯野哉

人妻のぬす人にあふ枯野哉

野は枯れて残りし牛と地蔵哉

犬吠て枯野の伽藍月寒し

狐火や那須の枯野に小雨ふる

門許り残る冬野の伽藍哉

牛帰る枯野のはてや家一つ

ゆらゆらと立つや冬野の女郎花

幽霊画讃

何うらむさまか枯野の女郎花

冬田 ふゆた

刈あとの株に海苔つく冬田哉

いなむらの崩れて黒き冬田哉

雁落ちて冬田に崩す一文字

氷 こおり

田鼠のはしる音あり初氷

馬渡るかたや湖水の初氷

浮くや金魚唐紅の薄氷

諏訪の海女もわたる氷哉

白鷺の片足あげる氷哉

摺鉢を手水鉢におろして

水鉢の氷をたゝく擂木哉

氷柱 つらら

大仏の鼻水たらす氷柱哉

つらゝして轆轤の雫絶えにけり

千鳥 ちどり

散ると見てあつまる風の千鳥哉

渺〃と何もなき江の千鳥哉

関守の厠へ通ふ千鳥哉

牛のつらに崩るゝ闇の千鳥哉

船に積む牛のさわぎや小夜千鳥

新田や牛に追はれて立つ千鳥

蜑が家や行燈の裏に鳴く千鳥

鴨 かも

竹藪の裏は鴨鳴く入江哉

鴨啼て小鍋を洗ふ入江哉

一つ家に鴨の毛むしる夕哉

鴛鴦 おしどり・おし

薄雪にふられて居るや鴛一つ

あはれ也死でも鴛の一つがひ

浮寝鳥 うきねどり

朝見れば吹きよせられて浮寝鳥

鳰 にお・かいつぶり

かいつぶり思はぬ方に浮て出る

冬の蜂 ふゆのはち

人をさす剣はさびて冬の蜂

鷹 たか

渡りかけて鷹舞ふ阿波の鳴門哉

据て行く鷹の目すごし市の中

鷹それて夕日吹きちる嵐哉

暖鳥 ぬくめどり

うつかりと放すまじきか暖鳥

河豚 ふぐ

我をにらむ達磨の顔や河豚汁

鰒提げて帰るや市の小夜嵐

鰒に似た顔と知らずや坊が妻

鰒汁くふや獸うそむく裏の山

鰒くふや獸うそむく裏の山

風吹てふぐくふ夜のさわがしき

風吹て河豚を隠す袂かな

海鼠 なまこ

平鉢に氷りついたる海鼠哉

空死と見えであはれな海鼠哉

海鼠出る頃を隠れてむぐらもち

中納言師時法師をたしなむ

海鼠とも見えで中〃あはれ也

画賛

海老は鎧、海鼠の裸を笑つて曰く

鯨 くじら

小嶋かと見れば汐吹く鯨哉

棒鱈 ぼうだら

棒鱈を引ずつて行く内儀哉

鶯子啼 うぐいすのこなく

さゝ鳴や張笠乾く竹の垣

落葉 おちば

夜嵐やどこの落葉を鳰の海

干網に吹きためられし落葉哉

月寒し木葉衣を風わたる

湖の上に舞ひ行く落葉哉

徳利提げて巫女帰り行く落葉哉

椽に干す蒲団の上の落葉哉

弓杖に人の佇む落葉哉

大寺の屋根にしづまる落葉哉

鼓うてば木の葉散る也能舞台

根岸草庵

三尺の庭に上野の落葉かな

上野公園

落葉掃く腰掛茶屋の女哉

芭蕉像賛*

寒ければ木の葉衣を参らせん

紅葉散る もみじちる

かけ橋や今日の日和を散る紅葉

釣鐘に紅葉の画賛

散る紅葉女戒を犯す法師あり

冬木立 ふゆこだち

犬吠て里遠からず冬木立

産神や石の鳥居も冬木立

野の宮の鳥居も冬の木立哉

山陰や村の境の冬木立

村もあり酒屋もありて冬木立

ひかひかと神の鏡や冬木立

宮嶋

沖中や鳥居一つの冬木立

壽老人賛*

其杖も男鹿の角も冬木立

茶の花 ちゃのはな

茶の花の茶の葉あるこそ恨みなれ

庭下駄に茶の花摘まん霜日和

茶の花や霜にさびたる銀閣寺

枯柳 かれやなぎ

井戸のぞく小供も居らず枯柳

枯柳相如が題字古りにけり

帰花 かえりばな

入相の鐘に開くか帰り花

蔵陰に雀鳴くなり帰り花

帰り花比丘の比丘尼をとふ日哉

寒梅 かんばい

日の筋の一つ二つは寒の梅

寒梅や焚き物盡きて琴一つ

山茶花 さざんか

山茶花の椽にこほるゝ日和哉

山茶花や石燈籠の鳥の糞

寒椿 かんつばき

寒椿力を入れて赤を咲く

年中の明家なりけり冬椿

寒椿落て氷るや手水鉢

枯薄 かれすすき

うしろから吹く風多し枯薄

枯尾花姥のやうにて恐ろしき

狼のふみゆく音や枯尾花

尾花枯て砂利ほる丘に鴉鳴く

尾花枯て石あらはるゝ箱根山

木魚と鼓と三味線とをかきたる画に

世の中を悟つて枯れる薄哉

恋塚や薄は枯れて牛の糞

枯芭蕉  かればしょう

芭蕉枯れんとして其音かしましき

枯蓮 かれはす

不忍池 二句

蓮枯て夕栄うつる湖水哉

蓮枯て弁天堂の破風赤し

長恨歌

太液の枯蓮未央の枯柳

枯蘆 かれあし

枯蘆の中に火を焚く小船哉

枯蘆や沼地つゞきの薄氷

枯蔦 かれつた

からみつく枯蔦長し牛の角

水仙 すいせん

水仙や紫袱紗黒茶碗

水仙や根から花さく鉢の中

枯れはてしおどろが下や水仙花

獺祭書屋

古書幾巻水仙もなし床の上

誰がすんで京のはづれの冬牡丹

冬牡丹  ふゆぼたん

冬牡丹江口の君の姿かな

寒菊 かんぎく

寒菊の日和待ちける莟哉

枯菊 かれぎく

菊枯て筆塚淋し寺の庭

室咲 むろざき

易の占ひして金取り出しける事を

山吹の室咲見せよ卜師

冬枯 ふゆがれ

冬枯や柿をくはへて飛ぶ鴉

冬枯や酒蔵赤き村はづれ

冬枯や賎が檐端の烏瓜

冬枯や絵の嶋山の貝屏風

冬枯や雑木の奥の松林

冬枯や巡査に吠ゆる里の犬

冬枯に犬の追ひ出す烏哉

冬枯にうら紫の万年青哉

冬枯の垣根に咲くや薔薇の花

冬枯の木間に青し電気燈

冬枯の一隅青し三河嶋

冬枯をのがれぬ庵の小庭哉

辻君の衾枯れたる木陰哉

蕪引 かぶらひき

よつ引てひようとぞ放す大蕪

大根引 だいこんひき

夕月に大根洗ふ流れかな

紙燭とつて大根洗ふ小川哉

大根引く音聞きに出ん夕月夜

練馬道大根引くべき日和哉

葱 ねぎ

葱洗ふ浪人の娘痩せにけり

白葱の一皿寒し牛の肉

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