サイト内検索
寒山落木一 表紙

デスクトップトラベル 子規の旅

正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

寒山落木一

このページの句をメールで送信する

明治廿四年 冬

鐘つきはさびしがらせたあとさびし

人之性善

濁り井の氷に泥はなかりけり

木枯や木はみな落ちて壁の骨

小烏の鳶なぶりゐる小春哉

(はせを忌)*

頭巾きて老とよばれん初しくれ

三日月を相手にあるく枯野哉

秋ちらほら野菊にのこる枯野哉

冬かれや田舎娘のうつくしき

夕日負ふ六部背高き枯野哉

埋火や隣の咄聞てゐる

雲助の睾丸黒き榾火哉

小春日や浅間の煙ゆれ上る

木枯やあら緒くひこむ菅の笠

順礼の笠を霰のはしりかな

松山百穴

神の代はかくやありけん冬籠

笹の葉のみだれ具合や雪模様

しばらくは笹も動かず雪模様

冬 動物

水鳥の四五羽は出たり枯尾花

枯あしの折れこむ舟や石たたき

鴨ねるや舟に折れこむ枯尾花

千鳥なく灘は百里の吹雪哉

水鳥のすこしひろがる日なみ哉

枯あしの雪をこほすやをしのはね

鷹狩や陣笠白き人五人

耳つくや下より上へさす夕日

売島痩せ孟郊寒し雪の梅

枯あしや名もなき川の面白さ

馬の尾に折られ折られて枯尾花

田舎

わらんべの酒買ひに行く落葉哉

順礼一人風の落葉に追はれけり

笘の霜夜の間にちりし紅葉哉

明治廿五壬辰年

はじめの冬 天文

ほんのりと茶の花くもる霜夜哉

北風や芋屋の烟なびきあへず

呉竹の奥に音あるあられ哉

青竹をつたふ霰のすべり哉

一ッ葉の手柄見せけり雪の朝

雪の夜や蓑の人行く遠明り

初雪や小鳥のつゝく石燈籠

初雪をふるへばみのゝ雫かな

一里きて酒屋でふるふみのゝゆき

初雪や奇麗に笹の五六枚

雪の中うたひに似たる翁哉

静かさや雪にくれ行く淡路嶋

雪の日の隅田は青し都鳥

からかさを千鳥はしるや小夜時雨

さらさらと竹に音あり夜の雪

初雪や軽くふりまく茶の木原

雪折の竹に乞食のねざめ哉

白雪におされて月のぼやけ哉

うらなひの鬚にうちこむ霰哉

夜廻りの木に打ちこみし霰哉

三日月を時雨てゐるや沖の隅

乕図*

吹付てはては凩の雨もなし

万山の木のはの音や寒の月

凩や虚空をはしる汽車の音

凩や虚空をかける汽車の音

牛若の下駄の跡あり橋の霜

達磨三味をひく 画賛*

凩に三味も枯木の一ツ哉

朝霜を洗ひ落せし冬菜哉

凩や追手も見えすはなれ馬

新聞で見るや故郷の初しくれ

時雨るや筧をつたふ山の雲

冬雑(天文除)

高田の馬場にすむ古白のもとを訪ふて

日あたりや馬場のあとなる水仙花

一月廿二日夜半ふと眼を開けば窓外月あかし扨は雨戸をや引き忘れけんと思ひて左の句を吟ず翌曉さめて考ふれば前夜の発句は半醒半夢の間に彷彿たり

冬籠夜着の袖より窓の月

炭二俵壁にもたせて冬こもり

破蕉先生に笑はれて

冬こもり小ぜにをかりて笑はるゝ

鰒汁や髑髏をかぎる医者の家

骨折で四五輪さきぬ冬のうめ

茶坐敷の五尺の庭を落葉哉

藪ごしやはだか参りの鈴冴る

不忍池

水鳥の中にうきけり天女堂

冬枯や蛸ぶら下る煮売茶屋

ものくはでかうもやせたか鉢敲

達磨忌や戸棚探れは生海鼠哉

出つ入つ数定まらぬ小かもかな

犬張子くづれて出たり煤払

鉢叩頭巾をとれははげたりな

面白うたゝかば泣かん鉢叩

宵やみに紛れて出たり鉢敲

森こえて枯野に来るや旅烏

煤払のほこりの中やふじの山

煙草道具 画賛*

吹きならふ煙の龍や冬こもり

手の皺を引きのばし見る火鉢哉

夜著かたくからだにそはぬ寒さ哉

廿五年 終りの冬 時節

いそがしく時計の動く師走哉

高尾山〔二句〕*

凩をぬけ出て山の小春かな

不二を背に筑波見下す小春哉

小春日や又この背戸も爺と婆

冬川の涸れて蛇籠の寒さ哉

為朝のお宿と書し寒さ哉

病人と静かに語る師走哉

松山会*

行年を故郷人と酌みかはす

初冬に何の句もなき一日かな

行年を鉄道馬車に追付ぬ

返事せぬつんぼのぢゞや神無月

屋の棟に鳩のならびし小春哉

御格子に切髪かくる寒さ哉

馬糞のいきり立たる寒さ哉

鳥居より内の馬糞や神無月

馬痩せて鹿に似る頃の寒さ哉

君が代は大つごもりの月夜哉

乾鮭も熊も釣らるゝ師走哉

魚棚に熊笹青き師走哉

年の尾や又くりかへすさかさ川

ありたけの日受を村の冬至哉

乞食寄る極楽道や小六月

仰向けぬ入道畠の寒さ哉

玉川に短き冬の日脚哉

年のくれ乞食の夢の長閑也

きぬきぬにものいひ残す寒哉

年のくれ命ばかりの名残哉

ぬす人のぬす人とるや年の暮

白足袋のよごれ盡せし師走哉

いそがしい中に子を産む師走哉

羽子板のうらに春来る師走哉

年の暮月の暮日のくれにけり

廿五年 終りの冬 人事 器用

鉢叩雪のふる夜をうかれけり

茶店にて*

穂薄になでへらされし火桶哉

月花にはげた頭や古頭巾

炭竈に雀のならぶぬくみかな

古暦雑用帳にまぎれけり

きぬぎぬに寒声きけは哀れ也

金杉や二間ならんで冬こもり

猫老て鼠もとらず置火燵

君味噌くれ我豆やらん冬こもり

同じ名のあるじ手代や夷子講

此度は娵にぬはせじ角頭巾

読書燈*

古はくらしらんぷの煤払

しぐれずに空行く風や神送

乾鮭の腹ひやひやと風の立つ

節分や親子の年の近うなる

鶏もうたひ参らす神迎

達磨忌や混沌として時雨不二

湯の山や炭売帰る宵月夜

節季候の札の辻にて分れけり

どの馬で神は帰らせたまふらん

寒声や誰れ石投げる石手川

遠ざかり行く松風や神送り

松山*

掛乞の大街道となりにけり

塩焼くや煤はくといふ日もなうて

老が歯や海雲すゝりて冬籠

冬籠日記に夢を書きつける

廓*

にくらしき客に豆うつねらひ哉

此頃は声もかれけり鉢たゝき

本陣にめして聞かばや鉢叩

つみあげて庄屋ひれふす年貢哉

道〃にこぼるゝ年のみつぎ哉

ふるまはん深草殿に玉子酒

臘八のあとにかしましくりすます

嵐雪の其角におくる紙衣哉

柊をさす頼朝の心かな

顔見せやぬす人になる顔はたれ

常闇を破る神楽の大鼓哉

榾の火に石版摺のすゝけかな

すとうぶや上からつゝく煤払

初暦めでたくこゝに古暦

手をちゞめ足をちゝめて冬籠

貧乏は掛乞も来ぬ火燵哉

世の中を紙衣一つの軽さかな

鼻息に飛んでは軽し宝舟

手と足に蒲団引きあふ宿屋哉

廿五年 終りの冬 天文 地理

鉄眼師によす

凩や自在に釜のきしる音

寄贈馬骨*

凩や京にそがひの家かまへ

訪愚庵*

浄林の釜にむかしを時雨けり

冬の日の二見に近く通りけり

凩や夜着きて町を通る人

とりまいて人の火をたく枯野哉

馬糞も共にやかるゝ枯野哉

新宿に荷馬ならぶや夕時雨

玉川*

鮎死て瀬の細りけり冬の川

冬川の涸れて蛇籠の寒さ哉

吹雪くる夜を禅寺に納豆打ツ

稲かりて力無き冬の初日哉

雪の脚宝永山へかゝりけり

朝霜や藁家ばかりの村一つ

松杉や枯野の中の不動堂

色里や時雨きかぬも三年ごし

夜廻りの鉄棒はしる霰哉

十一騎面もふらぬ吹雪かな

誰かある初雪の深さ見て参れ

乞食*

初雪の重さ加減やこもの上

石手寺*

しくるゝや弘法死して一千年

白きもの又常盤なりふじの雪

赤煉瓦雪にならびし日比谷哉

親牛の子牛をねぶる霜夜哉

しぐるゝやともしにはねる屋根の漏

灯の青うすいて奥あり薮の雪

爪琴の下手を上手にしぐれけり

猪の牙ふりたてる吹雪哉

猪の岩ふみはづす吹雪哉

むつかしき姿も見えず雪の松

くれ竹の雪ひつかつき伏しにけり

内川や外川かけて夕しぐれ

興居嶋へ魚舟いそぐ吹雪哉

瀧壷の渦にはねこむ霰哉

凩にはひつくばるや土亀山

引抜た手に霜残る大根哉

角地の四隅に残る氷かな

寒月に悲しすぎたり両大師

子をかばふ鶴たちまどふ吹雪哉

浪ぎははさらに横ふくふゞき哉

初雪の瓦屋よりも藁屋哉

ふらばふれ雪に鈴鹿の関こえん

吹雪来んとして鐘冴ゆる嵐哉

関守の雪に火を焼く鈴鹿哉

かるさうに提げゆく鍋の霰哉

曙や都うもれて雪の底

熊笹の緑にのこる枯の哉

廿五年 終りの冬 生物

さゝ啼や小藪の隅にさす日影

馬糞のぬくもりにさく冬牡丹

汽車道の一すぢ長し冬木立

さゝ啼や茂草の奥の松蓮寺

さむらいは腹さへきると河豚汁

媒払のそばまで来たり鷦鷯

蝉のから砕けたあとや帰り花

冬の梅裏手の方を咲きにけり

馬糞の側から出たり鷦鷯

馬糞の中から出たり鷦鷯

はげそめてやゝ寒げ也冬紅葉

干嶋艦覆没

ものゝふの河豚にくはるゝ悲しさよ

麦蒔やたばねあげたる桑の枝

ちる紅葉ちらぬ紅葉はまだ青し

木の葉やく寺のうしろや普請小屋

議会

麦蒔た顔つきもせす二百人

石原に根強き冬の野菊哉

冬枯の草の家つゝく烏哉

薄とも蘆ともつかず枯れにけり

凩に尻をむけけり離れ鴛

小石にも魚にもならず海鼠哉

鮭さげて女のはしる師走哉

焼芋をくひくひ千鳥きく夜哉

千鳥啼く揚荷のあとの月夜哉

千鳥なく三保の松原風白し

海原に星のふる夜やむら千鳥

いそがしく鳴門を渡る千鳥哉

一村は皆船頭や磯千鳥

帆柱や二つにわれてむら千鳥

安房へ行き相模へ帰り小夜千鳥

磯濱や犬追ひ立てるむら千鳥

文覚をとりまいて鳴く千鳥哉

こさふくや沖は鯨の汐曇り

生残る蛙あはれや枯蓮

凩にしつかりふさぐ蠣の蓋

旅籠屋や山見る窓の釣干菜

冬椿猪首に咲くぞ面白き

冬枯やいよいよ松の高うなる

冬枯に枯葉も見えぬ小笹哉

天地の気かすかに通ふ寒の梅

おろおろと一夜に痩せる暖鳥

ぬくぬくと日向かゝえて鶏つるむ

明の月白ふの鷹のふみ崩す

冬枯のうしろに高し不二の山

冬枯のうしろに立つや不二の山

冬枯の野に学校のふらふ哉

松枝町*

四五枚の木の葉掃き出す廓哉

東野の紅葉ちりこむ藁火哉

松山堀ノ内*

梟や聞耳立つる三千騎

鰒釣や沖はあやしき雪模様

鷺谷に一本淋し枯尾花

松山*

寒梅や的場あたりは田舎めく

枯れてから何千年ぞ扶桑木

吹き入れし石燈籠の落葉哉

逃げる気もつかでとらるゝ海鼠哉

ほろほろと朝霜もゆる落葉哉

いさり火の消えて音ありむら千鳥

小年不及大年*

年九十河豚を知らずと申けり

引きあげて一村くもる鯨哉

祝*

としとしに根も枯れはてず寒の菊

わろひれす鷹のすわりし嵐哉

絵のやうな紅葉ちる也霜の上

白鷺の泥にふみこむもみち哉

もみち葉のちる時悲し鹿の声

谷窪に落ち重なれるもみち哉

居風呂に紅葉はねこむ筧哉

はきよせた箒に残るもみち哉

二三枚もみち汲み出す釣瓶哉

一つかみづゝ爐にくべるもみち哉

舟流すあとに押しよるもみち哉

石壇や一つ一つに散もみち

日光*

神橋は人も通らす散紅葉

藁屋根にくさりついたるもみじ哉

豆腐屋の豆腐の水にもみち哉

衣洗ふ脛にひつゝくもみち哉

裏表きらりきらりとちる紅葉

梟や杉見あぐれば十日月

寒山落木 1 次のページへ

Yahoo! カテゴリ掲載サイトです

旅行、観光 > 旅のノウハウ

“のら猫をかゝえて寝たる寒さ哉”この句をメールに添付をクリックで子規の俳句を添えたメールが送れる!

旅のパラメーター

今年のあなたのディスティネーションは…

都道府県ランキング

自分で作る47都道府県ランキング…