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寒山落木一 表紙

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正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

俳句稿 明治31年

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明治31年

冬 時候

焼跡に小屋かけて居る寒さ哉

牢を出て再び寒し娑婆の風

月の雲ちぎれて飛びし寒哉

亡き犬に犬小屋覗く寒さ哉

亡き人のまほろし寒し化粧の間

祝新婚

寒き夜を猶むつまじく契るべし

題猿図〔二句〕

飼猿よこの頃木曽の月寒し

人間を笑ふが如し年の暮

背戸の外は日本海の波寒し

背戸寒く日本海に向ひけり

北の窓日本海を塞ぎけり

冬の宿狼聞て温泉のぬるき

熊に似て熊の皮著る穴の冬

桜画く冬の扇や物狂

灯を置かぬ狂女が部屋の寒哉

行く年の御幸を拝む狂女哉

一念の狂女となりぬ寒き恋

繙いて冬の部に入る井華集

病中小照自題

写し見る鏡中の人吾寒し

知らぬ人に道譲りたる寒哉

小説を草して独り春を待つ

犬吠えて夫呼び起す寒夜哉

裁判の宣告のびて歳暮れぬ

裁判の宣告のびて歳暮るゝ

新聞〔三句〕

黒わくに知る人を見る寒哉

行く年の警察種や三頁

新築の窓に墨つく寒哉

伐株や紅盡きし冬の園

冬の朝鯉を求めて市に入る

御幸待つ冬の小村の国旗哉

宮城

大君の御留守を拝む神無月

乏しからぬ冬の松魚や日本橋

蕎麦屋出て永阪上る寒さ哉

床の間に櫁の青き寒さ哉

金性の貧乏者よ年の暮

水草の花に小春の西日哉

土凍てゝ南天の実のこぼれけり

葬の灯の水田にうつる寒哉

冴ゆる夜の北斗を焦す狼烟哉

下総に一日遊ぶ小春哉

池の石に亀の居らざる小春哉

掏られけり大つごもりの蕎麦の銭

尿せしわらべを叱る霜夜哉

蜜柑買ふて里子見に行く小春哉

十に足らぬ子を寺へ遣る寒哉

猩〃死

猩〃の三七日頃か鐘氷る

松寒し樓門兀て矢大臣

冬人事

祝新婚

神集め神の結びし縁なれや

むつかしく炭団に炭をつぎかけし

炭取の粉炭をはたく埃り哉

炭はねて眼をしばたゝく泪哉

炭積んで白河下る荷汽車哉

油買ふて炭買ふことを忘れたり

炭はねて始まらんとする茶の湯哉

炭取の炭にまじりぬ歯朶の屑

炭はねて七堂伽藍灰となりぬ

其炭の火より炭屋の焼けにけり

火消えて堅炭残る火鉢哉

狼に引かぶりたる蒲団哉

夜興引の犬を吠えけり寺の犬

竹かつく狂女に逢へり年の市

寒垢離や狂女を見たる丑の時

冬籠る若き狂女や坐敷牢

中山や狂女もこぞる御命講

賽銭を投げる狂女や神の留守

賽銭に狂女が願や神の留守

洟に狂女の恋の老いなりし

年惜む狂女が恋や豆の数

年忘狂女に恋す酔心

鳴雪翁を懐ふ

侃々も諤々も聞かず冬籠

病中有感

遼東の夢見てさめる湯婆哉

会堂に国旗立てたりクリスマス

兎角して佝僂となりぬ冬籠

寒の内よりはや恋わたる猫の声よ

凍え死ぬ人さへあるに猫の恋

声高に書読む人よ冬籠

見苦しき子をいとしむや赤頭巾

かぶりそめて人に見らるゝ頭巾哉

手爐さげて頭巾の人や寄席を出る

かならずや頭巾めさるる租翁の画

人丸は烏帽子芭蕉は頭巾にて

忘れ置し頭巾の裏を見られけり

間違へて笑ふ頭巾や客二人

頭巾二人橋を渡りて別れけり

御法度の坊主頭や丸頭巾

着心の古き頭巾にしくはなし

こしらへて皆菊に入らぬ頭巾哉

西行の頭巾もめさず雪の不盡

酔ふて吟す東坡の頭巾脱んとす

弁慶は其頭巾こそ兜なれ

頭巾著て檜笠提けたり旅の僧

頭巾著て浄土の近き思ひあり

舊悪の心洗ふて頭巾哉

舊悪の形更へたる頭巾哉

打ちまじり同じ頭巾や村夫子

信心のはじめに著たる頭巾哉

十年の妾にひまやる頭巾哉

頭巾著て俵に上る指図哉

頭巾著て物は心にさからはず

恰好な古き頭巾を買ひ得たり

戯作者のたぐひなるべし絹頭巾

冬籠和尚は物をのたまはす

言はんとして頭巾正しぬ卜師

頭巾著る忍ひ姿や落しさし

煤掃や冠の箱雛の箱

霜掩ひ蘇鉄は泣かずなりにけり

何の木そ霜よけしたる塀の内

牡丹ありし処なるべし霜掩ひ

霜よけの笹に風吹く畠哉

霜よけや牡丹の花の一つ咲く

神前の橘の木に霜よけす

移し植ゑて霜よけしたる芭蕉哉

たらちねの遣愛の蜜柑霜よけす

霜早き根岸の庭や霜掩ひ

おちぶれて霜も防がぬ牡丹哉

耳糞の蜂になるまで冬籠

野が見ゆるガラス障子や冬籠

御旅立竈の神を見送らん

早稲田派の忘年会や神楽阪

本所区に編入されぬ冬住居

爐開や厠に近き四畳半

爐開の藁灰分つ隣かな

爐開や細君老いて針仕事

山茶花や爐を開きたる南受

巨燵あけて蓋のしてある矢倉哉

爐開て残菊いけし一人哉

爐開や故人を会すふき膾

離れ家に爐開早し老一人

冬籠る今戸の家や色ガラス

夜神楽の面の古びや火の映り

埋火の側に老い行く猟男哉

冬こもる灯のかすかなりや西の対

冬こもるゆかりの人や西の対

芭蕉忌に何の儀式もなかりけり

旅に病んで芭蕉忌と書く日記哉

芭蕉忌や芭蕉に媚びる人いやし

蒟蒻に発句書かばや翁の日

無落款の芭蕉の像を祭りけり

芭蕉忌や吾に派もなく伝もなし

札幌より林檎一箱送られて

一箱の林檎ゆゝしや冬籠

顔見せのこゝも田之助贔屓哉

風引の若き主や卵酒

御命講の花かつぎ行く夕日哉

傾城の顔見て過ぬ酉の市

芭蕉忌や其角嵐雪右左

ひとり言ぬるき湯婆をかゝえけり

寒垢離や兄におくれて母一人

盲子の笑顔淋しき頭巾哉

鉢叩だまつて行くは唖なるか

聾の絵師おとつれん冬籠

年忘坐頭と瞽女の一坐哉

誓ひには漏れぬ十夜の盲哉

神迎かたはの娘あはれなり

耳遠く目うすし何を年忘

あしらへば善く笑ふ子や赤頭巾

雑炊のきらひな妻や冬籠

鎌倉の大根畠や冬籠

冬こもる人の多さよ上根岸

大磯によき人見たり冬籠

山に入る人便りなし冬籠

宿替の蕎麦を貰ふや冬籠

日あたりのよき部屋一つ冬籠

山陰や暗きになれて冬籠

咲き絶えし薔薇の心や冬籠

善く笑ふ夫婦ぐらしや冬籠

善く笑ふ男が来たり冬籠

笑ひかゝる児にくれたる頭巾哉

大殿の笑ひ聞えつ年忘

即事 〔三句〕

冬籠る部屋や盥の浮寝鳥

蕪村忌の風呂吹くふや鴨の側

冬籠盥になるゝ小鴨哉

蕪村忌の風呂吹盛るや台所

椽側に切千切るや絵師か妻

並べたる門松店や寺の前

冬 天文

雪探し熊を誘ふ穽

霜の灯は狂女なるべし丑の時

風そふて木の雪落る夜半の音

病む人に戸あけて見する吹雪哉

町に入る吹雪の蓑や旅の人

案内乞ふ合羽の雪や知らぬ人

武蔵野も空も一つに吹雪哉

日のさゝぬ四角な庭や霜柱

菊も刈り薄も刈りぬ霜柱

水仙は咲かでやみけり霜柱

狼の小便したり草の霜

悩み伏す主をはげます吹雪哉

遼東の雪に馴れたる軍馬哉

法官や僻地に老いて髭の霜

松明に雪のちらつく山路哉

瓦斯燈や柳につもる夜の雪

新聞ノ一

筆に声あり霰の竹を打つ如し

凩や芭蕉の緑吹き盡す

凩や松葉吹き散る能舞台

亡き妻を夢に見る夜や雪五尺

移徒やきのふ植ゑたる松の雪

鶏頭の黒きにそゝぐ時雨かな

返り咲く花何々ぞ初時雨

藁頭巾の雪ふるふたる戸口哉

人行かぬ北の家陰や霜柱

鶴の巣を傾けてふる霰哉

口こはき馬に乗たる霰哉

追立つるかたはの馬や夕時雨

鷲の子の兎をつかむ霰哉

初雪の年の内にはふらざりし

道に坐る瞽女と子供と小夜時雨

小坐頭のたはれをかしや雪礫

大雪の鴉も飛ばぬ野山哉

逢ふ人の皆大雪と申しけり

隠れ住む古主を訪ふや雪の村

城門の釘大いなる霰哉

蓑笠や小門を出づる雪の人

冬 地理

潮流の北より来る氷哉

明神の狐と現じ氷哉

枯菊に氷捨てたる朝日哉

水鉢の氷を砕く星月夜

氷噛む狂女が胸の焔かな

人絶えて狂女に逢ひし枯野哉

道哲の寺を過ぐれば冬田哉

田の泥に雁の足跡凍りけり

水鉢の氷捨てたる葉蘭哉

透き通る氷の中の紅葉哉

金州の南門見ゆる枯野哉

雉つけて帰る一騎や冬の原

枇杷の実の僅に青き氷柱哉

地租増徴

此辺も税の増したる冬田哉

不忍

東台の松杉青き氷哉

こゝらにも人住みけるよ冬の山

冬 動物

千鳥吹く日本海の広さ哉

千鳥吹く日本海の嵐哉

関守も居らず千鳥も鳴かずなりぬ

磯の松に千鳥鳴くべき月夜哉

三味線に千鳥鳴く夜や先斗町

二群に分れて返す千鳥哉

光琳や水紺青に白千鳥

光琳やうつくしき水に白千鳥

須磨の宿の襖に描く千鳥哉

須磨の宿の屏風に描く千鳥哉

須磨の宿の欄間に彫れる千鳥哉

鴛鴦の画の襖にこもる狂女哉

初五文字のすわらでやみぬ海鼠の句

碧梧桐判募集

狼に寒鮒を獻す獺の衆

勝公事の海鼠を譏る河豚哉

清国亡命者に贈

鯨汁しばらく勇を養はん

聖堂やひつそりとして鷦鷯

木兎の鳴きやむ杉の霰哉

杜夫魚のまうけ少きたつき哉

から鮭の阪東武士が最期哉

鷹据うる人に逢ひけり原の中

御社や庭火に遠き浮寝鳥

海鼠眼なしふくとの面を憎みけり

牡蠣汁や居続けしたる二日酔

屠蘇強ふや鴨汁盡きて蠣の汁

あざ笑ふ花和尚の声やふくと汁

乾鮭や頭は剃らぬ世捨人

冬 木

紅葉散る山の日和や杉の露

山茶花に新聞遅き場末哉

徳川の霊屋の側や帰花

活けて久しき茶の花散りぬ土達磨

砂村や稲荷を祭る冬木立

山茶花の垣に銀杏の落葉哉

大木の二本並んで落葉哉

茶の花や庭のうしろの東山

茶の花やうしろ上りに東山

山茶花に南受ける書斎哉

北庭や日影乏しき枇杷の花

冬木立煙の立たぬ小村哉

門を入りて飛石遠き落葉哉

冬 草

大根引て葱畠は荒れにけり

大根引て葱淋しき畠哉

両岸に大根洗ふ流れ哉

両側に大根洗ふ流れ哉

捷報の来し朝なり大根曳

門前の大根引くなり村役場

大根引く畑にそふて吟行す

大根引く畑にそふて散歩哉

麦を蒔く畑に出でゝ散歩哉

草枯や狼の糞熊の糞

冬枯や熊祭る子の蝦夷錦

霜枯や狂女に吠ゆる村の犬

夕顔の枯れにし宿や狂女住む

きのふ見し狂女も居らず枯芒

鉄砲に兎かけたり枯薄

日の照らぬ枇杷の木陰や石蕗の花

芭蕉枯れて緑乏しき小庭哉

冬枯の根岸を訪ふや絵師か家

草枯るゝ庭の日向や洗濯す

草枯るゝ賎の垣根や枸杞赤し

庭に干す土人形や石蕗の花

金蔵の南おもてや石蕗の花

金蔵の壁に日あたる石蕗の花

木を伐て根深畠に倒しけり

籠膽や芒の中に刈れ残る

蕪引く妻もあるらん大根引

萩刈りし庭のかなたや枯芒

狗の子の小便するや石蕗の花

鶏頭のとうとう枯てしまひけり

からけたる縄のゆるみや枯芒

露石より天王寺蕪を送られて

蕪肥えたり蕪村生れし村の土

濕気多き根岸の庭や冬の菊

枯蔦や売家覗く破れ門

蕪引て緋の蕪ばかり残りけり

枯蔦や売家覗く破れ門

蕪引て緋の蕪ばかり残りけり

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