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寒山落木一 表紙

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正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

 〔俳句稿以後〕 明治34年

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明治34年

冬 時候

竹村黄塔「吾寒園」の一篇を残して二月一日といふに此世を去りければ

寒園に梅咲く春も待ちあへず

冬雑〔五句〕

朝な朝な粥くふ冬となりにけり

小百姓冬物買ひに出たりけり

新しき銭湯出来つ冬の町

物の寂猿蓑冬にはじまりぬ

菓物に乏しくもあらず冬の庵

冬 人事

薬喰〔三句〕

蘭学の書生なりけり薬喰

利目あらん利目なからん薬喰

乾鮭にわびし日頃や薬喰

紙衣

絹布著て上に紙衣の羽織かな

胼胝、皹、霜やけ〔三句〕

皸や母の看護の二十年

皸や貧に育ちし姉娘

霜やけの手より熬豆こぼしけり

霜掩ひ〔三句〕

霜よけの俵破れし霰かな

舶来の大事の木なり霜掩ひ

小松菜に霜よけしたる畠かな

煮凍〔三句〕

煮凍の出来るも嬉し新世帯

煮凍や北に向きたる台所

煮凍につめたき腹や酒の燗

橇、雪沓〔四句〕

雪沓も脱がで爐辺の話かな

雪沓や雪無き町に這入りけり

かんじきに馴れたる奥の女かな

雪車下りてかじきをつける麓かな

手袋〔五句〕

手袋の指破れたり雪まろげ

手袋の編みさしてある病かな

指の無き手袋下女に与へけり

手袋に手を引く児の歩行かざる

手袋に銀貨を捜るかくしかな

四十二の古ふんどしや厄落し

雪車〔六句〕

雪車歌の聞ゆる谷や雪車見ゆる

大木を載せたる雪車の辷りかな

雪車引いて立ちどまりたる話かな

雪車引いて医師を載せて戻りけり

雪車道や童の雪車も引き出でぬ

雪車引いて入る町中や雪浅し

懐爐〔五句〕

腹稿を暖めて居る懐爐かな

芝居見や懐爐入れたる腹の冷

野の茶屋に懐爐の次をかへにけり

懐爐冷えて上野の闇を戻りけり

びろうどの青きを好む懐爐かな

火事〔四句〕

会更けて遠火事を見る帰りかな

遠火事を見つゝ下りけり九段坂

鍋焼や火事場に遠き坂の上

小説を書く夜も更けて火事の鐘

納豆〔四句〕

水仙の花のさかりや納豆汁

子を負ふて孀と見ゆれ納豆売

納豆売新聞売と話しけり

歌ふて曰く納豆売らんか詩売らんか

寒垢離〔六句〕

寒垢離や不動の火焔氷る夜に

寒垢離や一人行き又一人行く

寒垢離の黙つて走る二人かな

寒垢離や信心堅き弟子大工

寒垢離や二人の童子目に見ゆる

寒垢離に逢ひける揚屋の戻りかな

餅つき〔五句〕

病床に聞くや夜明の餅の音

餅搗にあはす鉄道唱歌かな

眼さますや日三竿に餅の音

粟餅も搗き海苔餅も搗きにけり

四海波静かに餅の音高し

暖爐〔三句〕

病床の位置を変へたる暖爐かな

ストーヴにほとりして置く福寿草

暖爐焚くや破璃窓外の風の松

掛乞〔四句〕

掛乞や京の女の親子連

掛乞の曰く主人の曰くかな

掛乞の乏しき掛や新世帯

掛乞の二度来る除夜となりにけり

大原御祖母様の七十七をいはひ申して

百歳の春も隣や餅の音

冬 天文

霰〔二句〕

魚棚に鮫並べたる霰かな

驚かす霰の音や冬籠

木枯〔五句〕

木枯や紫摧け紅敗れ

木枯や石引き入るゝ庭普請

木枯や皆からびたる力餅

木枯の茶堂人無き埃かな

木枯や落ちなんとする岩に堂

冬の日〔五句〕

六畳の奥迄冬の日ざしかな

冬の日のよくあたる椽やおもちや箱

冬の日のあたらずなりし乾飯かな

冬の日やよらで過ぎ行く餅の茶屋

雪雲の縁を色とる冬日かな

冬 地理

冬田〔五句〕

泥深き小田や田螺の冬籠

家めぐる冬田の水の寒さかな

貧乏な村をとりまく冬田かな

冬田広く遥かに見ゆる小城かな

緒の切れし下駄捨てゝある冬田かな

冬 動物

鯨〔二句〕

鯨取る舟を見送る妻子かな

鯨汁鯨は盡きてしまひけり

浮寝鳥〔六句〕

鴛鴦の二つ並んで浮寝かな

居る程の小鴨動かぬ浮寝かな

かいつぶり浮寝のひまもなかりけり

浮寝鳥平入道の天下かな

水遠く渚曲りて浮寝鳥

徳川の夢や見るらん浮寝鳥

鷦鷯

物あればすなはち隠るみそさゞい

鴛鴦〔四句〕

静かさやをしの来て居る山の池

をしの中を邪魔する鳥もなかりけり

いつからのやもめぐらしぞをし一つ

飼ひなれしをしや汽車にも驚かず

冬 木

冬木立色ある者はなかりけり

盗人の金や隠せし冬木立

二三本杉もまじりて冬木立

枯木〔四句〕

何鳥か五六羽来たる枯木かな

四五尺の枯木にとまる鴉かな

制札を掛けたる宮の枯木かな

風情無き枯木の庭となりにけり

〔墨汁一滴を書かんと思ひたちて〕

筆禿びて返り咲くべき花もなし

冬 草

水仙

水仙の花釵や洛の神

枯菊〔七句〕

枯菊に飛び来る蟲もなかりけり

枯菊を折りて捨てけり水仙花

丈高く枯菊立てる時雨かな

枯菊の色に出にけり鷦鷯

菊細工舞台も枯れてしまひけり

枯菊の壇とりのけてしまひけり

菊枯れて冬薔薇蕾む小庭かな

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