正岡子規の俳句を子規直筆の原稿で味わうショートタイムトリップ。

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図説俳句大歳時記 春 359ページ 角川書店
カラー版 新日本大歳時記 春 202ページ 愛蔵版 222ページ 講談社
季語別 子規俳句集 春 119ページ 子規記念博物館
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明治19年
一重づゝ一重つゝ散れ八重桜
明治20年
谷中 観音堂
むら鳥のさわぐ所や初桜
散る梅は祇王桜はほとけ哉
明治23年
桜から人にうつるや山の風
傘に落つる桜の雫かな
朧とは桜の中の柳かな
明治24年
制札にちりかゝりけり山桜
植半
八重桜咲きけり芋に蜆汁
二三日はちりさかりけり山さくら
花ちるや寂然として石仏
あくびした口に花ちる日永哉
ならんたる鳥居の赤し山桜
明治25年
ふつふつと彼岸桜の莟哉
花守の烏帽子かけたる桜哉
猿引は猿に折らする桜哉
町はつれ桜桜と子供哉
谷底に樵夫の動く桜かな
もやもやとかたまる岨の桜かな
白馬の一騎かけたり朝桜
夜桜や蒔繪に似たる三日の月
ちることは禿もしらず夕桜
別荘の注進来たりはつ桜
大かたの枯木の中や初桜
夕くれを背戸へ見に行桜哉
夜桜の中に火ともす小家哉
夜桜や露ちりかゝる辻行燈
小娘のからかささすやちる桜
小娘の傘さすや散る桜
白桃の桜にまじる青さ哉
わびしらに桜ちるなり緋の袴
わびしらに桜ちるなり女人堂
山桜さく手際よりちる手際
傾城の息酒くさし夕桜
桜ちる此時木魚猶はげし
十六日桜
孝行は筍よりも桜かな
日うけよき水よき処初桜
桜より奥に桃さく上野哉
山内神社
西山に桜一木のあるじ哉
洋本の間にはさむ桜かな
石炭の車ならぶや散る桜
上野
黒門に丸の跡あり山さくら
よし野
醉ふて寝て夢に泣きけり山桜
井戸端の桜ちりけり鍋の底
朝桜駒のびづめのひやひやと
しんとして露をこぼすや朝桜
明治26年
三月尽 さんぐわつじん
桜日記三月尽と書き納む
春雑
さけば咲く桜海棠梨李
初桜
五六本咲くや吉野の初桜
無住寺の鐘ぬすまれて初桜
初桜木曾の手紙に雪がふる
嶋台に梅も残りて初さくら
糸桜
咲きまじる柳の中の糸桜
家二つ狭きが中の糸桜
糸桜下の方より咲きにけり
馬方の桜見かけて唄ひけり
名をもたぬ京の桜はなかりけり
牛部屋の薄花桜さきにけり
有明に三分傾く桜哉
目隠しの女あぶなし山桜
男より女の多し山桜
弁慶の指のあとあり山桜
草臥てよし足引の山桜
須磨
敦盛の鎧に似たり山桜
敦盛の鎧に似たる山桜
吉野山
南朝の桜今年も咲きにけり
上野
木の間に白きもの皆桜哉
第二子をまうけたる人に
初桜二番桜も咲きにけり
戒
山桜恋をはなれて哀れ也
花にぬれて樽に綿衣をぬきかけし
朝桜
横雲もたのみありげや朝桜
夕桜
夕桜鐘つき殿に物申す
三井寺をのぼるともしや夕桜
阪本の人家暮れたり山桜
月代やたそがれ桜風ふくむ
夜桜
門の花夜行く人の小唄哉
持重る月夜桜の雫かな
よし原の朧夜桜露もなし
ふるへとも朧夜桜露もなし
灯のともる雨夜の桜いぢらしや
夜桜や辻燈籠の片うつり
うつくしき桜の雨や電気燈
遅桜
片枝は夏へまたげて遅桜
大方は忘れられけり遅桜
遅桜静かに詠められにけり
姥桜
我知らじ老いたるをこそ姥桜
秋色桜
十三の年より咲て姥桜
墨染桜
ほのめくや墨染桜夕月夜
釣鐘の寄進出来たり花盛
散桜
炭竈の上にくづるゝ桜かな
ほろほろとひとりこぼるゝ桜哉
忠度宿花下図
山桜夢を埋めて散りにけり
小柄杓の底にひつゝく桜哉
散る桜たゞ悲しさよ嬉しさよ
桜散るたゞこひしさよ嬉しさよ
筆とれば短冊の上に桜ちる
さそはれて面白く散る桜哉
宮守の風折烏帽子桜散る
桜狩
桜狩上野王子は山つゞき
花守
花守や蝨ふるへばちる桜
明治27年
春雑
桃柳桜の中を蜆売
初桜
これはこれはあちらこちらの初桜
山桜いくさのあとゝ思はれず
桜咲てお白粉売や紅粉売や
大桜只一もとのさかり哉
井戸端の秋色桜雫せよ
観音の大悲の桜咲きにけり
嶋原の一本桜古りにけり
鳳輦の桜の上に見ゆるかな
海見ゆる桜の中の床几哉
何見るそ桜の茶屋の遠見鏡
雲助の博奕うつなり山桜
屋の棟の五重にたゝむ桜哉
炭竈のつめたき頃や山桜
何者が死んで此墓此桜
黒門を出れば這入れば桜哉
大臣の別荘赤き桜かな
悼静渓叟
其まゝに花を見た目を瞑がれぬ
糸桜
くれなゐの絹糸桜綻びぬ
夕桜
灯のともるたそかれ桜静かなり
月代の桜に動く夕かな
夜桜
夜桜や大雪洞の空うつり
夜桜や十二欄干灯幽かなり
夜桜や人静まりて雨の音
月よひよひ桜日に日に満てる哉
芳原
大門や夜桜深く灯ともれり
石塔や一本桜散りかゝる
落花
桜ちる勿来と馬士の唄ひけり
遅桜
遅桜遅きを花の上手かな
明治28年
熊谷の鎧脱ぐ日や散る桜
聾の聖尊し山桜
板塀の折り曲りけり初桜
門前に児待つ母や山桜
一里来て下に見下す桜かな
虚無僧の頤長き桜かな
面白う舟に見て行く桜かな
釣鐘の雲に濡れたる桜かな
お忍びの編笠に散る桜かな
大粒な雨ふりいでぬ桜狩
帰るさや暮れて一人に桜散る
山腹に灯見えぬあれや桜寺
三つまたやどの道行かば山桜
古庭に一重ばかりの桜かな
折り参らせて初桜とぞ申しける
山の端の桜尋ねん遠眼鏡
何奴ぞ桜に掛けし長楷子
三芳野や桜の中の山一つ
世の中は桜が咲いて笑ひ声
道端に桜咲くなり興福寺
塔高し桜に落つる三日の月
盆栽の小桜早し京の市
人を踏んで桜折るなり築地越
山桜あたりに雲もなかりけり
花咲いて坊主の顔の黒さ哉
花散りぬ曰く大仏曰く鐘
花咲いて妻なき宿ぞ口をしき
花散つて水は南へ流れけり
家見ゆる花の麓の郭かな
乱れ吹く花に未の太鼓かな
小娘は花の使の文箱かな
銭湯で上野の花の噂かな
真黒に花見る人のさかりかな
いそがしや花散りかゝる二三日
浮世とは下戸の嘘なり花に酒
勾欄に人顔明けて花寒し
一杯に下戸の醉ひたる桜かな
観音で雨に逢ひけり花盛
真直にふるや都の花の雨
妻無しのとまる覚悟で花見哉
ふんどしのゆるんで暮るゝ花見哉
むつかしき雲が出てけり花盛
同じ人も乗らで花見の渡し舟
鉄橋や左に見ゆる花の雲
吉原〔二句〕
うちかけや一かたまりの桜散る
うちかけの並んで通る桜かな
従軍の首途に
出陣や桜見ながら宇品まで
須磨
敦盛の塚に桜もなかりけり
金州にて
故郷の目に見えてたゞ桜散る
松山龍穏寺
めづらしや梅の莟に初桜
春植物雑
柳桜柳桜と栽ゑにけり
はつきりと柳の中の桜かな
明治29年
家君の二十五回忌にあひて
手向くるや餘寒の豆腐初桜
墨陀桜花満開の図
白雲の影も動かず春の水
夜桜
面白いかな花の雨雨の月
清水のともし火深し夕桜
清水や桜の上の鉄燈籠
十許り灯の並びけり山桜
灯ともして帰る禰宜あり夕桜
更くる夜を静まる里の桜哉
夜桜にこもる茶店の煙かな
吉原や雪洞多き八重桜
羽衣に桜吹きこむ舞台哉
散桜
吉原や烏鳴いても散る桜
上野
散つた桜散る桜散らぬ桜哉
向嶋の画に題す〔二句〕
万人の鼻息に散る桜かな
散つて一度に花見の人を埋めかし
悼
花散つて心やすくも寝入りけん
菅笠に題す
此上に落花つもれと思ふかな
陣笠に桜散るなり六七騎
有明の花静かなり角櫓
佳人花の如し我衣破れたり
花に雪駄ちやりちやりと人の機嫌かな
浪人や敵を尋ね江戸の花
庵からは杉の上野の花曇
花曇稲荷の森にかゝりけり
只一人花見の留守の地震かな
中啓を襟にさしたる花見哉
花咲きぬあそこは社こゝは寺
二大隊花見の中を通りけり
岩角や一かたまりの花の雲
花咲いて思ひ出す人皆遠し
夜明から俄に曇る花見かな
隣隣屋根の上より花の雲
世の花にわれ家も無き旅人かな
交番やこゝにも一人花の醉
世の中は花に振袖松に鳶
叱られて醉のさめたる花見かな
暁の花咲く山の緑かな
うれしげに小便するや花の山
この国の男に生れ桜かな
杉の杜の出口に白き桜かな
知らぬ人に盃強ひる桜かな
小坊主の太刀はきたがる桜哉
彌次郎兵衛喜多八帰る桜かな
名は桜通稱は花と申しけり
阪道や桜の上に寺一つ
大仏の顔よごれたり山桜
大仏の耳かくれけり山桜
いとさまの手を引く道や山桜
提灯の短冊赤し山桜
桜々帰りは醉ふて白拍子
桜折る女の綱や雨の中
日暮るゝや桜の茶屋の繋ぎ馬
枝ながら桜流れぬ大堰川
名のれ名のれ桜ぬす人髯奴
人を見ん桜は酒の肴なり
山荒れて鐘も桜も雹の音
すうと出た桜の枝に目白哉
花ながら既に梢の若葉かな
花の山鐘楼ばかりぞ残りける
入口も桜出口も桜かな
古宮の桜咲きけり杉の奥
新阪や向ふに見ゆる花の雲
松杉も花に隠れてしまひけり
黒門も摺鉢山も桜かな
入口に風船飛ばす桜かな
桜ばかり女ばかりの上野かな
山下
岡ぞひの桜は赤き蕾かな
病中
寝て聞けば上野は花のさわぎ哉
同じ人もなくて日毎の花見かな
花の雲言問団子桜餅
三味太鼓花見の舟の花も見ず
二三町押されてありく花見哉
花七日堤沈むこと一寸
向島図
此花に酒千斛とつもりけり
茶番
大將の醉ふておくるゝ花見かな
菊五郎賛
桜咲くこれは尾上の菊五郎
仮鬟の図に
又けふも花見の茶番雨になる
松山十六日桜
うそのやうな十六日桜咲きにけり
遅桜
遅桜見に来る人はなかりけり
大方の緑の中や遅桜
木雑
川上は挑も桜もなかりけり
不忍池
弁天をとりまく柳桜かな
明治30年
人事
黄昏や雛の灯に桜散る
動物
牛嶋や桜に早き蜆汁
茶番去り茶番来る隅田の桜哉
写真取る桜がもとの小女郎哉
弔古白
古白死して二年桜咲き我病めり
植半の鼓聞ゆる桜かな
半玉が燭の心剪る桜かな
桜折つて桜に狂ふ女かな
招魂社奉納〔二句〕
鏡掛けて御魂を移す桜哉
公園の入口見えて桜かな
柳北が寄附せし土手の桜かな
球燈高く音楽聞ゆ桜哉
汽車の窓に見上る岡の桜哉
別荘の桜妾宅の柳哉
誰そや上野の月夜桜に詩を吟す
うかれ心瓶の桜に灯をともす
新道に痩せたる柳桜哉
明治31年
京に来てひたと病みつきぬ花盛
花に醉ふて頭痛すといふ女哉
金屏に風防く鉢の桜哉
大寺の松も桜もなかりけり
女生徒の遊びところや絲桜
垂れかゝるしたれ桜や石燈籠
我病で桜に思ふ事多し
奠都三十年祭
我王の桜咲くなり三十年
京町の火事や桜は恙なし
上野〔三句〕
兵燹に杉は残りて山桜
昼中や桜にこもる人の息
雨晴るゝ桜に杉の雫かな
無事庵より熊の肉を送り来る
江戸桜越後の熊を肴哉
京華日報発刊祝
千万言一時に開く桜哉
山門に乞食三味ひく桜哉
常盤津の會ある寺の桜哉
遅桜花見ぬ人の来りけり
馬車の上に垂るゝホテルの桜哉
雑報子報ず公園の桜咲く
権現や桜もまじる杉の雨
明治32年
人事
まじへ買ふ桃と桜や雛祭
雛棚に桜は低し三段目
雛棚に桜活けたり三段目
雛過ぎて瓶の桜の盛り哉
梅捨てゝ桜活けたる雛哉
池の端に書画の會あり遅桜
子を負ふた手に桜持つうしろ哉
夜桜や上野を通る戻り道
九時の鐘に茶店を鎖す桜かな
不忍
弁天の楼門赤き桜哉
料理屋の紅梅散りて桜哉
行き行きて桜なくなる堤哉
吉原や雨の夜桜蛇目傘
明治33年
桜散り芝居鎖して暮の春
地理
氷解けて桜咲く也榛名山
名物の蜆乏しき桜哉
新海苔の市に上るや初桜
金澤ノ桜花ヲ封ジ来ル
雪国の桜の花は小粒哉
鼠骨出獄始メテ来ル
いたわしさ花見ぬ人の痩せやうや
料理屋の厠うつくし八重桜
橋長く水青うして松桜
静渓先生七回忌
桜散つて山吹咲きぬ御法事
明治34年
畑打
畑打や飛鳥の桜見ゆるなり
名ある寺の桜に多き石碑かな
徳川の桜残りて哀れなり
明治35年
徳川の桜明治の桜かな
六田越えて桜に近し一の坂
吉野山第一本の桜哉
両側の桜咲きけり登り口
水分の神が霧ふく桜哉
南朝の恨を残す桜かな
西行庵花も桜もなかりけり
千本が一時に落花する夜あらん
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